Albert Memorial (アルバート記念碑)
今回の標本箱は、また建築ねたなのだけど、建物というよりは記念碑。
19世紀ゴシック・リヴァイヴァルの建築家、 Sir George Gilbert Scott(ジョージ・ギルバート・スコット)設計の、Albert Memorial (アルバート記念碑)。
1861年に急逝したアルバート公(ヴィクトリア女王の夫)を追悼して、建造され、1872年に完成。
生前人望の高かったアルバート公なので、マンチェスター等、イギリス国内にいくつか記念碑が建造されているが、ロンドンではハイドパークの南の端、ちょうどロイヤル・アルバート・ホールと向かい合わせる位置に、設置されている。
長い間ロンドンに住んでいるにもかかわらず、わざわざ見に行くことはなかったのだが、今年に入ってゴシック・リヴァイヴァル、特にギルバート・スコット卿設計の建造物を調べていて、そういえば・・・アルバート記念碑もそうだったな・・・と、思い出した次第。
まずは全体像。
もうキラキラ・コテコテのギルバート・スコット卿らしい、ゴシックぶり。
中央に鎮座する金色の像がアルバート公。
産業革命で全盛期を迎えた19世紀イギリス帝国の、文化・産業の躍進は、ヴィクトリア女王とともに、このアルバート公の尽力に負うところが大きいといわれている。
なので、記念碑を埋め尽くす彫刻等の装飾も、すべて文化・産業に関連したアレゴリー。
これを「読んで」いくのもなかなか面白い。ある意味、19世紀的「コンセプチュアル」な造形、とも言える。
これは一番先端の天使達。
その下に立つ女神像達は、8つのVirtues(徳)、
信仰、希望、慈善、謙遜、剛毅、分別、正義、節制を象徴する、とのことだけれど、
この写真の3体は、剛毅、慈善、謙遜かな・・・というのは私の想像。
その下のモザイクはこの「面」のテーマである「詩(Poetry)」のアレゴリー。
「詩(Poetry)」はヨーロッパでは、音楽から文学までを包括する芸術の概念で、
「絵画」「彫刻」「建築」とあわせて「四芸術」とされる。
この記念碑でもそれぞれの「面」が各芸術の象徴に当てられている。
両脇の柱の上のniches(ニッチ)に立つ黒い彫像は、
それぞれ修辞学、薬学、哲学、生理学の四科学の象徴。
修辞学、哲学が科学(sciences)に含まれるというの不思議な感じがするけれど、
人文科学と自然科学という風にどちらも「科学」の一部ということで。
キャノピーの下の、金色アルバート公。
実は90年代の修復の後、再びこのご立派な色になったのだそうで、
それまでは大気汚染が主原因らしいが、真っ黒の像だったそう。
天井モザイク四面に描かれている紋章も、何か意味があるのだが、
これは調べきれなかった。
アルバート公の像とほぼ同じ高さ、柱の4つの角に立つ黒い彫像は、
天文学、地質学、化学、幾何学のアレゴリー。
これは、天文学かな・・・?多分。
その下に見える、四隅に建つ白い彫像群は、それぞれ農業、商業、工学、製造業を象徴。
その下の台座の部分には、上記の四芸術それぞれの、古今東西著名人の像がびっしり並ぶ。
この部分は、特にFrieze of Parnassus(パルナソスのフリーズ=詩壇の装飾帯)と呼ばれる。
南面の「詩人・音楽家部」。ピタゴラス(詩人として扱われている)、ダンテ、
中央はホメロス、右にチョーサーとシェイクスピアがいる。
<ここ>に全体像が載っている。
東面の「画家部」。左はマサッチョ、立派なひげはダ・ヴィンチ師匠で、
中央はラファエロ、その右にミケランジェロ。
全体像は<ここ>。
北面の「建築家部」。ひざをついているのがジオットー
というぐらいで、歴史的建築家はあまり誰のことだか解らないな・・・。
全体像は<ここ>。
で・・・、西面の「彫刻部」は撮り忘れたのだが、Wikiで見れるからいいか。
全体像は<ここ>。ミケランジェロ「彫刻部」でも登場。
そして、その四隅に配置された、世界四大陸のアレゴリー。
なにしろ、世界はイギリスの旗の下にある・・・と、言わんばかりに、
イギリスがブイブイいわせていた全盛期なので・・・。
インドの象を中心にした「アジア」。<全体像>
駱駝に乗るファラオ風の「アフリカ」。<全体像>
(切れてしまったが・・・)バッファローに乗る「アメリカ」。<全体像>
ゼウスが変身した白い牡牛の乗るのは、エウローペー=「ヨーロッパ」。
(ギリシャ神話のエウローペーの話は<ここ>)。<全体像>
最後に周囲を取り囲む、装飾的なフェンス。
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