Tuesday 6 November 2012

Albert Memorial (アルバート記念碑)

今回の標本箱は、また建築ねたなのだけど、建物というよりは記念碑。
19世紀ゴシック・リヴァイヴァルの建築家、 Sir George Gilbert Scott(ジョージ・ギルバート・スコット)設計の、Albert Memorial (アルバート記念碑)。
1861年に急逝したアルバート公(ヴィクトリア女王の夫)を追悼して、建造され、1872年に完成。
生前人望の高かったアルバート公なので、マンチェスター等、イギリス国内にいくつか記念碑が建造されているが、ロンドンではハイドパークの南の端、ちょうどロイヤル・アルバート・ホールと向かい合わせる位置に、設置されている。
長い間ロンドンに住んでいるにもかかわらず、わざわざ見に行くことはなかったのだが、今年に入ってゴシック・リヴァイヴァル、特にギルバート・スコット卿設計の建造物を調べていて、そういえば・・・アルバート記念碑もそうだったな・・・と、思い出した次第。


Albert Memorial
まずは全体像。
もうキラキラ・コテコテのギルバート・スコット卿らしい、ゴシックぶり。


中央に鎮座する金色の像がアルバート公。
産業革命で全盛期を迎えた19世紀イギリス帝国の、文化・産業の躍進は、ヴィクトリア女王とともに、このアルバート公の尽力に負うところが大きいといわれている。
なので、記念碑を埋め尽くす彫刻等の装飾も、すべて文化・産業に関連したアレゴリー。
これを「読んで」いくのもなかなか面白い。ある意味、19世紀的「コンセプチュアル」な造形、とも言える。


Albert Memorial
これは一番先端の天使達。

Albert Memorial
その下に立つ女神像達は、8つのVirtues(徳)、
信仰、希望、慈善、謙遜、剛毅、分別、正義、節制を象徴する、とのことだけれど、
この写真の3体は、剛毅、慈善、謙遜かな・・・というのは私の想像。

Albert Memorial
その下のモザイクはこの「面」のテーマである「詩(Poetry)」のアレゴリー。
「詩(Poetry)」はヨーロッパでは、音楽から文学までを包括する芸術の概念で、
「絵画」「彫刻」「建築」とあわせて「四芸術」とされる。
この記念碑でもそれぞれの「面」が各芸術の象徴に当てられている。
両脇の柱の上のniches(ニッチ)に立つ黒い彫像は、
それぞれ修辞学、薬学、哲学、生理学の四科学の象徴。
修辞学、哲学が科学(sciences)に含まれるというの不思議な感じがするけれど、
人文科学と自然科学という風にどちらも「科学」の一部ということで。

Albert Memorial
キャノピーの下の、金色アルバート公。
実は90年代の修復の後、再びこのご立派な色になったのだそうで、
それまでは大気汚染が主原因らしいが、真っ黒の像だったそう。
天井モザイク四面に描かれている紋章も、何か意味があるのだが、
これは調べきれなかった。

Albert Memorial
アルバート公の像とほぼ同じ高さ、柱の4つの角に立つ黒い彫像は、
天文学、地質学、化学、幾何学のアレゴリー。
これは、天文学かな・・・?多分。
その下に見える、四隅に建つ白い彫像群は、それぞれ農業、商業、工学、製造業を象徴。

その下の台座の部分には、上記の四芸術それぞれの、古今東西著名人の像がびっしり並ぶ。
この部分は、特にFrieze of Parnassus(パルナソスのフリーズ=詩壇の装飾帯)と呼ばれる。

Albert Memorial- Poem
南面の「詩人・音楽家部」。ピタゴラス(詩人として扱われている)、ダンテ、
中央はホメロス、右にチョーサーとシェイクスピアがいる。
ここ>に全体像が載っている。

Albert Memorial - Painting
東面の「画家部」。左はマサッチョ、立派なひげはダ・ヴィンチ師匠で、
中央はラファエロ、その右にミケランジェロ。
全体像は<ここ>。

Albert Memorial - Architecture
北面の「建築家部」。ひざをついているのがジオットー
(画家の方で有名だけれど建築家でもあった)
というぐらいで、歴史的建築家はあまり誰のことだか解らないな・・・。
全体像は<ここ>。

で・・・、西面の「彫刻部」は撮り忘れたのだが、Wikiで見れるからいいか。
全体像は<ここ>。ミケランジェロ「彫刻部」でも登場。


Albert Memorial
そして、その四隅に配置された、世界四大陸のアレゴリー。

Albert Memorial
なにしろ、世界はイギリスの旗の下にある・・・と、言わんばかりに、
イギリスがブイブイいわせていた全盛期なので・・・。

Albert Memorial - Asia
インドの象を中心にした「アジア」。<全体像

Albert Memorial - Africa
駱駝に乗るファラオ風の「アフリカ」。<全体像

Albert Memorial - America
(切れてしまったが・・・)バッファローに乗る「アメリカ」。<全体像

Albert Memorial - Europa
ゼウスが変身した白い牡牛の乗るのは、エウローペー=「ヨーロッパ」。
(ギリシャ神話のエウローペーの話は<ここ>)。<全体像

Albert Memorial
最後に周囲を取り囲む、装飾的なフェンス。










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