Friday 3 April 2015

Fake Delft (デルフトもどき)

前回から引き続いて、Pottery Painting(ポタリー・ペインティング)にハマって、その上奇妙な企画を始めた話を今回。

タイトルでわかるように、デルフト風というか、もどきというか、偽物というか・・・・を作ってやろうじゃないか、と思いついた。
事の始まりは、ここの標本箱ではかなりお馴染みの、ノルマンディー箱アーティストのPおじさん。
11月のおじさんの誕生日にはいつも、夏に撮った写真を合成したりして、くだらない冗談デジタル・カードをメールで送りつけている。
去年は夏におじさんの18世紀ダッチ・デルフトコレクションの一枚をきれいに写真に撮ったので、それを元ネタにすることにした。

Le Chateau
これがその、18世紀デルフト。
オラニエ公ウィレム5世と、ヴィルヘルミーネ・フォン・プロイセンの
婚礼を記念した1767年の絵皿。
もうちょっと凝ったものが、アムスの国立博物館にも入っている。
<標本箱はこのページ


これにPおじさんと、プシャーの似顔絵を合成したら・・・、

Happy Birthday Peter !!
こんな風になった。
ちなみに、似顔絵は全然得意でないので、
撮ってきたおじさんやプシャーの写真で元絵に合うものを探して、
元絵サイズに縮小してPhotoshopではめ込み、
それをまたトレースしている。

これを送ったら、激ウケだったので・・・、
気をよくして、というか、調子に乗って、
クリスマス・プレゼントにフィジカルなお皿にして、
もう一度のけぞらしてやろうではないか・・・という企画を思いつく。
ちょうど、ポタリー・ペインティングをやっていることだし。

Physical plate for Christmas present
やってみたら、な・・・なんとなくそれ風のものが出来た。

しかし、だがしかし、25cm径の皿だったので、円周が長い長い。
それまでマグしか描いてなくて(つまり、マグ程度の円周しか描いたことがなくて)、いきなりこれはリープが大きすぎて、どっと疲れた。
色もこの段階では、まだ「混色しない」を守っていたので、なんだかちょっと深みがない。その上、専用転写紙の存在を知らず、皿と同じサイズにプリントした下絵の、アウトラインに穴をあけて、ジェルペンでドットを打って繋いでいったので、手間最大級。

とはいうものの、Pおじさんには再度激ウケ。
しかし、だがしかし、おじさんのメールから判断するに・・・、これはデジタル・プリントで作られていると、思っているフシあり。 私が何でも(Blurb本やら、カードケースやら、ラップトップケースやら、アンドロイド・ケースやら・・・)デジタルイメージで、カスタマイズ・オーダーして作るのを知っているので。
違う、手描きなんだ。 だから、ドット1個描き忘れているだろうが(さて、どこでしょう・・・笑)。

この時はあまりに大変だったので、「二度とこんなことはするまい」とおもった。
ところが、前回の話の16cm皿12枚入り箱入り、取り寄せ買い取りをやってしまったので、小型の皿がやたらたくさんある。
2人ぐらしのウチに12枚の皿ってのもな・・・と思って、4枚を、夏のノルマンディー滞在時のプレゼントにすることにした。
16cm皿なら、円周もそれほど長くなくて、マグ程度の時間+集中力で、一枚簡単に描けることがわかったので。
ところで、おじさんはダッチ・デルフト、それも18世紀のもののコレクター。最初に住んでいた家の頃は壁一面のキャビネットにコレクションを持っていたそう。2番目の家に引っ越す時に、大半のコレクションは売りさばいたそうだけれど、3番目の家にあたるル・シャトーにも、いくつかのお気に入りと、主にタイル類が飾られている。
これはもう、デルフトでいくしかないでしょう・・・と、不詳の弟子はデルフトの一夜漬けリサーチを始める。
アムスの国立博物館で「ポートレートのデルフト」を探していたのも、その一環。
しかし、アムスが空振りだったので、もしかすると、世界最強(かな?)のコレクション・展示数を誇るV&Aに何かあるかも、と思ってカメラをもって出かけた。
結果は・・・、当たり前といえばあたりまえ、V&Aのコレクションは「イングリッシュ・デルフト」が中心になっている。ダッチ・デルフトは殆どないのだった。
こうなったら・・・、イングリッシュ・デルフトでいくしかない。ロンドンからのゲストなので、イングリッシュ・デルフトネタでいいんでないかと。

English Delft - charger, James II
V&A所蔵、元ネタその1、ジェームズ2世のチャージャー。
(大型の飾り皿のことを、Charger=チャージャーと呼ぶ。)
17世紀イギリス、ブリストル製。
かなりヘタウマ、目なんて段違いだし。
ちゃんと資料が出てきた<このページ>。

Mock-delft, Peter Rex
デジタル・コラージュの下絵。
これは似てる・・・笑えるほど似ている。
実際の皿の縁のサイズに合わせて、縁の部分も狭くしている。

Mock-delft
出来上がり。
なんだか可愛くなってしまった・・・、こんな可愛いはずが絶対にないけど。

右のコースターはカラーテストで、このお皿を作る前に描いてみた。
デルフト特有の鈍い淡いブルー生地の色を、どうやって出すか、が課題。
そして、描線のブルーにも3段階ぐらい濃さがあるので、
それもどうやって出すか。
この頃から、やむなく「ペイント混色しないように」の禁を破り始める。
そして、専用転写紙の存在も知って、
作業効率が画期的に向上。

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English-delft, reference
V&A所蔵、元ネタその2、
同じく17世紀のブリストル製で、
チャールズ2世かウィリアム3世のポートレート。
資料は<このページ>。
これは35cmぐらいのチャージャーだけれど、
仕上げるのは16cmのサイズ。
なので、全身像は割愛してクローズアップに。

Edge pattern reference

縁のパターンの参考例も用意して・・・、

Mock-delft, Peter Rex - digital draft
これがデジタル・コラージュの下絵。
下絵の段階では、いつでもよく似てるんだよねー(笑)。

Mock-delft  hand-painted 16cm plate
出来上がり。
ブルーも赤も「禁色」の混色。
Pおじさん3枚作った中で、これが一番似ているかも。
ちなみに、「P R」というのは、
Peter Rex(ラテン語で王様)のこと。
最初のジェームス2世皿に準じてみた。

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English delft charger - William III, reference
V&A所蔵、元ネタその3、17世紀末
多分ロンドン製のイングリッシュ・デルフト。
William III (ウィリアム3世)のチャージャー。
資料は<このページ
これも、30cm以上あるチャージャーで、
これを16cm皿に描くのは、ちょっと無謀かも・・・。
でも、チャレンジ。

Mock-delft, King Peter - digital draft
デジタル・コラージュの下絵。
縁にボーダーのパターンをいれないで、
描写面積を最大限に。
地面とかはカットして、ぎりぎりまで馬を入れる。

Mock-delft  hand-painted 16cm plate
出来上がり。
目なんて小さくて描けなくて、タダの点目。
そのせいで、超すっとぼけている(笑)。
馬は、自分で言うなも何だが・・・力作。
オリジナルに準じて、タイトルはKP(King Peter)。


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English-delft reference
V&A所蔵、元ネタその4、
おぉ、これは17世紀後半のダッチ・デルフト、
お知らせエンジェル(というか、キューピッドかな?)
資料は<このページ>。
いや、これをPおじさんにしようなどという、
恐ろしことは考えていない。

Mock-delft, Angel Pussier - digital draft
やっぱり、プシャーがいないと話にならんでしょう。

Mock-delft  hand-painted 16cm plate
できあがり。Pが可愛いでしょ。
あんなによく確認したのに、やっぱりお腹に影を入れ忘れた。
ま、本人しかわからないからいいか・・・。


さぁ、これで、夏のノルマンディー滞在のおみやげは、準備完了。 それぞれの皿に、デジタル下絵+リファレンスのプリントを付けて、プレゼントしようと考えている。
そうしたら、悪乗りしやすい配偶者氏、添付する童謡風の詩を作ってくれた。
なので、これもキットの中に含まれることと・・・。


Good King Peter and his Angel Püsscha

Do wish most hopefully to conquer

Those three grand Western lands,

Which are Holland, France and green England.



良き王様ペーターと、彼の天使プシャー、

あわよくば、征服したいと願っている。

西洋の3つの大国を、

オランダ、フランス、そして緑なるイングランドを。












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