Monday 1 December 2014

Ham House (ハム・ハウス)-4-


National Trust (ナショナル・トラスト)のHam House(ハム・ハウス)から、今回は「Behind the scene tour (舞台裏ツアー)」に参加した時のイメージを中心に。

うちの配偶者氏、うちにジュエリーを見に来られた方ならご存知なのだけれど、またの名を「執事」。 過去生の一つは必ずや執事であったと、自分でも信じているフシがあって、客人とあれば、ドアを開けに出て部屋へ案内し、お茶を持ってきたり・・・というようなことが、大好き。 私はどちらかというと無頓着なので、なかなかいいバランスではある。
その嗜好のせいか、配偶者氏、大屋敷の使用人の暮らしというものにいつでも興味をもっている。 8月にハム・ハウスを訪れた時に、普段は公開されていない、ハム・ハウスの19世紀使用人クォーターのガイドツアーが、予約制で時々催されている、という話を耳にして、俄然興味津々。 直接ハム・ハウスに問い合わせて、月に2回(ぐらいだったと思う)のこのツアーに、ブッキングした次第(1時間のツアーで、入場料とは別料金の1人£8を、電話予約時にカードで支払っていた)。 そんなわけで、9月に再びハム・ハウスを訪れることとなった。


Ham House
これは、ハム・ハウス正面からいうと、右側のウィングの入口。

ここから、通常公開されているキッチンにも、アクセスする(ライトの灯っているところ。)
特別ツアーは、普段閉まっている黒いドアのところから始まる。
言語のニュアンスなんだけれど、当時の大屋敷は、現在でいうところのホテルみたいなもので、「使用人」というよりか、「従業員」という言葉の方がフィットする感じ。なので、以下、「従業員」ということにする。
このヴューが解りやすいので、ここで解説しておくと・・・、左側が17世紀建造のオリジナルの部分。 右側は18世紀の増築・・・というか、増築部分の方が大きいけれど。
真ん中のちょっと凹んだ狭いスペースが、従業員の「舞台裏」スペースで、これも18世紀増築の時に付け加えられた。


Ham House- Behind the Scene Tour
黒いドアを入ると、まず階段。
この部分は上階に住んでいる、屋敷主人一家の親戚や、
長期逗留者など、準ゲスト待遇の人々も使用することから、
豪華ではないにしても、そこそこ見栄えはいいように作られている。

Ham House- Behind the Scene Tour
その階段をどんどん上がっていく。

Ham House- Behind the Scene Tour
これは屋根裏部分で、従業員の寝室に続く狭いシンプルな廊下。


従業員にもはっきりとした序列があって、執事(butler)はいわば、「統括マネージャー」で立派な管理職。 その下で女性従業員のチーフである、「housekeeper」が女子部を取り仕切っている。 ハウスキーパーを日本語にすると「家政婦頭」なんて、もっさりした表現になってしまう。 現在ではハウスキーパーというと、「家政婦・お手伝いさん」の一般語になっているけれど、その昔は「女性従業員チーフ」だけが「ハウスキーパー」で、その下で働く女性はすべて「servant (使用人・従業員)」と呼ばれていた。
ハウスキーパーの女性とは別に、女主人の着付けやスタイリングを手伝う、側近の女性「lady's maid」が住み込んでいることも多い。 通常はハウスキーパーの管理下に入っているのだけれど、生まれ育ちが、中流以上の女性がこの任につくことがあると(女主人の親戚など)、この女性は従業員といえども、別格待遇なのだそう。 
部屋の清掃は女性従業員の仕事なので、人目につくこともあるため、制服を支給されている。(とはいえ、彼女たちは「影」の存在で、ゲストと話すことは、基本的には許されてはいない。) まったく表に出ない、キッチン、洗い場まわりの女性従業員は、制服が支給されていないことが多いそう。

一方、男性従業員は、執事の下に「Footman(フットマン)」と呼ばれる従業員がいて、彼らは来客の車のドアを開け、荷物を運び、食事を給仕する、いわばドアマン/ウェイターの役職。 ゲストと挨拶したり、要件を受け取るのも彼らの仕事で、表向きの活動は、彼らがすべて担っている。 彼らは、人前に出るタイプの従業員なので、かなりいい待遇で地位も高い。 きちんとした制服もあてがわれる。 身長がある程度あって、見栄えがいい、人当たりがいいこと、というのも、フットマンの条件に含まれているので、ちょうどホテル・スタッフを雇用するときのようなもの。 
そのまた下に、男性にも人前に出ない、下働きの従業員がいるが、 人前にはでないものの、キッチンのシェフはフットマンより、給与・待遇がいいケースが多いそう。
それ以外にも、会計や事務を担当するスタッフもいて・・・まぁ、現在の大型ホテルの従業員の原型は、ここにあったのか、と、いう印象を受ける。
男性従業員の寝室と、女性従業員の寝室は、真っ二つに分かれていて、その間にバトラーやハウスキーパー等、管理職の寝室がおかれていることが多い。 これは、ちょうど寄宿舎の振り分けに近いともいえる。


Ham House- Behind the Scene Tour
屋根裏部屋は2つの区画に分かれていて、
左右に男性・女性従業員の寝室が分けられている。
窓を乗り越えたら、女子部屋に行けるのではなかろうか?
と、つい考えてしまうが・・・、

Ham House- Behind the Scene Tour
やっぱり、管理職側もちゃんと考えてあって・・・、
窓は、「そういうこと」をしにいこうかと思わない、
子供の体格でしか、すり抜けられないようにできている(笑)。

Ham House- Behind the Scene Tour
寝室の内部を覗き見る。

Ham House- Behind the Scene Tour
管理職以外はすべて、2-3人部屋。
簡単なスラットに、せんべい布団に暖房ナシ。
(多分湯たんぽはあったことと。)


牢獄みたいで、とても待遇が悪いように見えるけれど、ここに戻ってくるのは、本当に寝るためだけで、睡眠時間も6時間程度。 なので、部屋というよりは、ただの寝床。一日働きまわって、つかの間くつろぐ時間があるとしたら、それは地階の従業員食堂で、ストーブを囲んでということになる。 なので、そこが居間の役割を果たしている。

このロンドン南西部お屋敷界隈でも、19世紀のハム・ハウスは待遇・労働条件がキツイことで、かなり有名だったそう。
それでも、19世紀末から20世紀初期にかけて勤務していた従業員の、1950年代の回顧記によると、仕事は厳しいけれど、引退するまでの間、一度もカゼにも病気にもならなかったのだとか。
もちろん「表」の階級の人々とは、まったく異なる境遇だけれど、地方農民が飢饉の被害を被ったり、都市部スラムで生活する人々がいる19世紀では、大屋敷の従業員というのは、ずいぶん「いい方」の境遇。
少なくとも、「食べるものに困らない」というのが、当時の庶民感覚だと、素晴らしいことなのだそう。

Ham House- Behind the Scene Tour
通路の一部に、17世紀の窓が残っている。
つまり・・・、この通路部分は17世紀には、
壁の外側。18世紀の増築で、通路は付け足されたので。

Ham House- Behind the Scene Tour
もういちど、通路・階段をぬけて、地階に下りる。
この部屋が、従業員食堂で、居間的なるところ。
従業員も階級社会、食事の順番等、
すべて役職の順にとっていくので、下っ端は
シチューの肉があたらない、プディングが残っていない・・・
目にあうのだとか。

Ham House
その部屋の食器棚。

Ham House
地下の通路。

Ham House
セラー(酒蔵)の一角。

Ham House- Kitchen
洗い場。

Ham House
従業員は地下で働いていて、
その窓も明かり取りのためだけで、
窓から外の状況や出来事が見えないようにできている。
なので、従業員が、執事に面接・採用されて、
働き出しても、「ご主人様」の姿をみたことがない、、
「靴」しか見たことがない、ということもありえる。

Ham House
もう一度、メインのキッチンへ。

Ham House
庭で栽培された「オーガニック」野菜を食べて、
よく体を使って働いていたら、従業員の暮らしも、
たしかに健康的ではあるかな。

Ham House- Kitchen
過去生執事の配偶者氏、シェフに転職。
というのは冗談で・・・、「Touch it(触ってみてください)」ディスプレイで、
パン生地をのばしてみる。

Ham House- Kitchen
次回も、まだ続くハム・ハウス、今度は、
野菜たちの育つ、屋敷の庭、外回りのイメージを。



Ham House
Ham Street, Ham, Richmond, Surrey, TW10 7RS UK

地図:

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