Ham House (ハム・ハウス)-4-
National Trust (ナショナル・トラスト)のHam House(ハム・ハウス)から、今回は「Behind the scene tour (舞台裏ツアー)」に参加した時のイメージを中心に。
うちの配偶者氏、うちにジュエリーを見に来られた方ならご存知なのだけれど、またの名を「執事」。 過去生の一つは必ずや執事であったと、自分でも信じているフシがあって、客人とあれば、ドアを開けに出て部屋へ案内し、お茶を持ってきたり・・・というようなことが、大好き。 私はどちらかというと無頓着なので、なかなかいいバランスではある。
その嗜好のせいか、配偶者氏、大屋敷の使用人の暮らしというものにいつでも興味をもっている。 8月にハム・ハウスを訪れた時に、普段は公開されていない、ハム・ハウスの19世紀使用人クォーターのガイドツアーが、予約制で時々催されている、という話を耳にして、俄然興味津々。 直接ハム・ハウスに問い合わせて、月に2回(ぐらいだったと思う)のこのツアーに、ブッキングした次第(1時間のツアーで、入場料とは別料金の1人£8を、電話予約時にカードで支払っていた)。 そんなわけで、9月に再びハム・ハウスを訪れることとなった。
これは、ハム・ハウス正面からいうと、右側のウィングの入口。
ここから、通常公開されているキッチンにも、アクセスする(ライトの灯っているところ。)
特別ツアーは、普段閉まっている黒いドアのところから始まる。
言語のニュアンスなんだけれど、当時の大屋敷は、現在でいうところのホテルみたいなもので、「使用人」というよりか、「従業員」という言葉の方がフィットする感じ。なので、以下、「従業員」ということにする。
このヴューが解りやすいので、ここで解説しておくと・・・、左側が17世紀建造のオリジナルの部分。 右側は18世紀の増築・・・というか、増築部分の方が大きいけれど。
真ん中のちょっと凹んだ狭いスペースが、従業員の「舞台裏」スペースで、これも18世紀増築の時に付け加えられた。
黒いドアを入ると、まず階段。
この部分は上階に住んでいる、屋敷主人一家の親戚や、
長期逗留者など、準ゲスト待遇の人々も使用することから、
豪華ではないにしても、そこそこ見栄えはいいように作られている。
その階段をどんどん上がっていく。
これは屋根裏部分で、従業員の寝室に続く狭いシンプルな廊下。
従業員にもはっきりとした序列があって、執事(butler)はいわば、「統括マネージャー」で立派な管理職。 その下で女性従業員のチーフである、「housekeeper」が女子部を取り仕切っている。 ハウスキーパーを日本語にすると「家政婦頭」なんて、もっさりした表現になってしまう。 現在ではハウスキーパーというと、「家政婦・お手伝いさん」の一般語になっているけれど、その昔は「女性従業員チーフ」だけが「ハウスキーパー」で、その下で働く女性はすべて「servant (使用人・従業員)」と呼ばれていた。
ハウスキーパーの女性とは別に、女主人の着付けやスタイリングを手伝う、側近の女性「lady's maid」が住み込んでいることも多い。 通常はハウスキーパーの管理下に入っているのだけれど、生まれ育ちが、中流以上の女性がこの任につくことがあると(女主人の親戚など)、この女性は従業員といえども、別格待遇なのだそう。
部屋の清掃は女性従業員の仕事なので、人目につくこともあるため、制服を支給されている。(とはいえ、彼女たちは「影」の存在で、ゲストと話すことは、基本的には許されてはいない。) まったく表に出ない、キッチン、洗い場まわりの女性従業員は、制服が支給されていないことが多いそう。
一方、男性従業員は、執事の下に「Footman(フットマン)」と呼ばれる従業員がいて、彼らは来客の車のドアを開け、荷物を運び、食事を給仕する、いわばドアマン/ウェイターの役職。 ゲストと挨拶したり、要件を受け取るのも彼らの仕事で、表向きの活動は、彼らがすべて担っている。 彼らは、人前に出るタイプの従業員なので、かなりいい待遇で地位も高い。 きちんとした制服もあてがわれる。 身長がある程度あって、見栄えがいい、人当たりがいいこと、というのも、フットマンの条件に含まれているので、ちょうどホテル・スタッフを雇用するときのようなもの。
そのまた下に、男性にも人前に出ない、下働きの従業員がいるが、 人前にはでないものの、キッチンのシェフはフットマンより、給与・待遇がいいケースが多いそう。
それ以外にも、会計や事務を担当するスタッフもいて・・・まぁ、現在の大型ホテルの従業員の原型は、ここにあったのか、と、いう印象を受ける。
男性従業員の寝室と、女性従業員の寝室は、真っ二つに分かれていて、その間にバトラーやハウスキーパー等、管理職の寝室がおかれていることが多い。 これは、ちょうど寄宿舎の振り分けに近いともいえる。
屋根裏部屋は2つの区画に分かれていて、
左右に男性・女性従業員の寝室が分けられている。
窓を乗り越えたら、女子部屋に行けるのではなかろうか?
と、つい考えてしまうが・・・、
やっぱり、管理職側もちゃんと考えてあって・・・、
窓は、「そういうこと」をしにいこうかと思わない、
子供の体格でしか、すり抜けられないようにできている(笑)。
寝室の内部を覗き見る。
管理職以外はすべて、2-3人部屋。
簡単なスラットに、せんべい布団に暖房ナシ。
(多分湯たんぽはあったことと。)
牢獄みたいで、とても待遇が悪いように見えるけれど、ここに戻ってくるのは、本当に寝るためだけで、睡眠時間も6時間程度。 なので、部屋というよりは、ただの寝床。一日働きまわって、つかの間くつろぐ時間があるとしたら、それは地階の従業員食堂で、ストーブを囲んでということになる。 なので、そこが居間の役割を果たしている。
このロンドン南西部お屋敷界隈でも、19世紀のハム・ハウスは待遇・労働条件がキツイことで、かなり有名だったそう。
それでも、19世紀末から20世紀初期にかけて勤務していた従業員の、1950年代の回顧記によると、仕事は厳しいけれど、引退するまでの間、一度もカゼにも病気にもならなかったのだとか。
もちろん「表」の階級の人々とは、まったく異なる境遇だけれど、地方農民が飢饉の被害を被ったり、都市部スラムで生活する人々がいる19世紀では、大屋敷の従業員というのは、ずいぶん「いい方」の境遇。
少なくとも、「食べるものに困らない」というのが、当時の庶民感覚だと、素晴らしいことなのだそう。
通路の一部に、17世紀の窓が残っている。
つまり・・・、この通路部分は17世紀には、
壁の外側。18世紀の増築で、通路は付け足されたので。
もういちど、通路・階段をぬけて、地階に下りる。
この部屋が、従業員食堂で、居間的なるところ。
従業員も階級社会、食事の順番等、
すべて役職の順にとっていくので、下っ端は
シチューの肉があたらない、プディングが残っていない・・・
目にあうのだとか。
その部屋の食器棚。
地下の通路。
セラー(酒蔵)の一角。
洗い場。
従業員は地下で働いていて、
その窓も明かり取りのためだけで、
窓から外の状況や出来事が見えないようにできている。
なので、従業員が、執事に面接・採用されて、
働き出しても、「ご主人様」の姿をみたことがない、、
「靴」しか見たことがない、ということもありえる。
もう一度、メインのキッチンへ。
庭で栽培された「オーガニック」野菜を食べて、
よく体を使って働いていたら、従業員の暮らしも、
たしかに健康的ではあるかな。
過去生執事の配偶者氏、シェフに転職。
というのは冗談で・・・、「Touch it(触ってみてください)」ディスプレイで、
パン生地をのばしてみる。
次回も、まだ続くハム・ハウス、今度は、
野菜たちの育つ、屋敷の庭、外回りのイメージを。
Ham House
Ham Street, Ham, Richmond, Surrey, TW10 7RS UK
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