Wednesday 2 December 2015

Southside House(サウスサイド・ハウス) -1-

今回また夏のロンドンに逆戻りで、7月に訪れたSouthside House(サウスサイド・ハウス)のイメージを。

ウチからさほど遠くないWimbledon(ウィンブルドン)、駅から北の丘の上のヴィレッジに上がっていって、Wimbledon Common(ウィンブルドン・コモン=コモンというのは、パークとはまた違うんだけれど、とにかく自然のままで残されているオープンスペースのこと)の南に面して建っている、レンガ壁に囲まれた17世紀に由来するお屋敷。
このエリアに、子供の頃住んでいた配偶者氏(今から、さかのぼること65年位、前世紀の50年代の話ですよ、つまり・・・)、古いレンガ壁の中に古いお屋敷があって、隠者紳士が、外界から隔絶して暮らしている、というのを聞いたことがあるのだそう。 前を通るたびに、その壁の奥の家を、ちょっと不気味な思いで眺めていたことを、今でも覚えているとか。
その「不気味屋敷」、実は興味深いインテリアで、その上、3月末~9月末の夏の期間、週に3日、1日3回のガイド・ツアーで公開されているという情報をキャッチしたので、さっそく申し込んで訪れてみることにした。

Southside House - Wimbledon
レンガ壁に囲まれたゲートに、現在は公開時などの情報が掲げられていて、
ここが歴史的建造物だとわかる。

Southside House - Wimbledon
Robert Pennington(ロバート・ペニントン)が1687年に建造した屋敷。
彼は、イギリス市民戦争でチャールズ1世が処刑された後、
クロムウェル独裁のコモンウェルスから逃れた、
チャールズ2世に伴って、オランダに亡命していた。
クロムウェルの死後、戴冠するチャールズ2世とともに帰国。
その後、息子をペストで亡くした後に、
当時ロンドンからは離れた村落だったこの地に、引退する形で移住した。
その折にオランダからの建築家に発注して、この屋敷を建造したのだそう。

Southside House - Wimbledon
上の写真のネオ・クラシカルのエントランスは、明らかに後年18世紀後半の改修で、
この写真でよく見える、ベイ・ウィンドウが、一方だけに付いている・・・、
と、いうのも、なんだか奇妙な構造。
壁に建物が付随していた痕跡なども見えるので、
色々と、後年の改築が行われていたもののよう。

Southside House - WimbledonSouthside House - Wimbledon
Plenty(豊穣)とSpring(春)と呼ばれる対の彫像は、
ロバート・ペニントンの妻と娘をモデルにしたといわれる。

この正面玄関は、現在は使われていなくて、
公開時の出入りも、裏の庭側に面した玄関から。

Southside House - Wimbledon
これがその、裏の方の現在の玄関。

Southside House -Wimbledon
中から見たところ。
夏の真っ盛りで、キュレーターと思しき人が庭仕事にも精を出している。
この屋敷は現在でもロバート・ペニントンの子孫が、
一部に居住しながら、トラストとして一般公開されているということなので、
ここで案内してくれたガイドさんやら、
その次のグループを案内していたガイドさんやら、
実は家族か親戚なんじゃーないか・・・と、
皆さんのアットホームな感じから、想像するのだった。

Southside House - Wimbledon
現在の玄関から入ってすぐの、ホールにあたる部屋。
2枚の17世紀と思われる絵画が、この部屋をぐっと格調高くしている。

Southside House - Wimbledon

Southside House - Wimbledon

Southside House - Wimbledon
部屋の一角に置かれた、人形劇のおもちゃは、
最近屋根裏から見つかったものだとか。

Southside House - Wimbledon
ここの最後の当主Major Malcolm Munthe(マルコム・マンザー少佐)が、
子供の頃このシアターで遊んでいたのだそう。

この通称「Major(少佐)」が、ここでの話の中心人物で、イギリスのみならずスエーデン、イタリーで養育された経験・人脈から、第二次世界大戦中は、スパイ活動用の特殊部隊に配属されていた。
戦後は、政界に進出を試みるが果たせず、その後は、相続したこの屋敷や、イタリア、スウェーデン、イギリス・ヘレフォードシャーの屋敷を維持・補修に専念する。(戦時中の負傷や極限下状態によるトラウマから、隠遁癖があったとされている。)
この後に出てくる様々な、シアトリカルというか、大仰なというか・・・な、修復・改装を導入した、(某王族の一人に、「最後の真のイギリスの奇人」とも称される)彼のテイストの根源には、この、オモチャ・オペラがあるのではないか・・・というので、ここにフィーチャーされている。
そして、ウチの配偶者氏が、子供心にちょっと不気味に感じていた、謎の隠者紳士はつまりこの「少佐」だったと判明したのだった。

Southside House - Wimbledon
この部屋に描かれた、母方のPennington-Mellor(ペニントン・マラー)家の紋章。
素朴というか・・・ちょっと素人っぽい描き方だと思ったら、
ここの屋敷の修復を手伝っていた、
「少佐」の兄弟・Peter(ピーター)の描いたものなのだそう。
兄弟なのに、彼の話はほとんど出てこなくて、
ロンドン市内の屋根裏で、ボヘミアンな暮らしをしていた・・・、
ということだったので、彼もエキセントリックな、
ドロップ・アウト氏だったのかもしれない・・・?(これは想像。)

Statue of John Axel Viking Pennington Munthe, Southside House
Photography by Jessica Mulley
私は見事に撮り忘れてたので、借り物写真だけど、
そのピーター氏の彫像が入口側のコートヤードにあった。

Southside House -Wimbledon
入口ホールの部屋から、次の部屋をつなぐ廊下には、
ポートレートがぎっしり。
私の聞き覚えが間違ってなかったら・・・、
全部がオリジナルではなく、幾つかの肖像画とマッチするように、
20世紀に制作されたものも含まれているのだとか。

Southside House - Wimbledon
その先の小部屋にある肖像画。
これにもまた裏話があって・・・、この方女性に見えるけれど、
実は18世紀のフランスのスパイ、Chevalier d'Eonシュヴァリエ・デオン)。

Southside House - Wimbledon
の、手紙もコレクションに入っている。
確か「少佐」のコレクションで、同じ「スパイ」境遇から、
シュヴァリエ・デオンに興味を持っていた・・・という話だったと思う。
(ちょっと記憶があいまい・・・。)

Southside House - Wimbledon
デオン氏のカリカチュア。
80年代にトガってた、Andrew Logan(アンドリュー・ローガン)氏の、
ALTERNATIVE MISS WORLD(オルターナティヴ・ミス・ワールド)のコスチュームって、
こんなの
ちゃんと、18世紀の元ネタがあったんじゃーないかー(笑)。

あー、余談が多くて、なかなかインテリアにたどり着かない・・・。

Southside House - Wimbledon
次の部屋は、プライベートのダイニングルーム。
テーブルの上にかかるランプシェードは、現代のもので、
カップケーキ用の紙カップを、いくつもホッチキス留めしたもの。
誰かの作品?かなりインパクトがあった。

Southside House - Wimbledon

Southside House - Wimbledon

Southside House - Wimbledon
これはティーンエイジャーのときの仮装した少佐を、
ピーターが描いた・・・だったような、あれ?その逆だったかな?
かなり聞いた話の記憶が曖昧になってきている。

Southside House - Wimbledon
壁には壁紙ではなくて、「壁布」でタペストリーのように覆われている。

Southside House - Wimbledon
その次に案内されるのが、このオフィシャルなダイニングルーム。

Southside House - Wimbledon
ここの絵画もお見事に、壁面スペースにフィットしているけれど、
ここのは20世紀に描き足したものではなくて、17-18世紀のものだそう。

Southside House - Wimbledon

Southside House - Wimbledon
この部屋の入口の横の暖炉。

ここにもまた、裏話があって・・・、2010年にここで火災がおきて、その後の修復工事中に、この暖炉の床下に秘密の小部屋がみつかった。その小部屋の中には、トランクに詰められた弾薬やら、銃やら、マシンガンやら・・・が見つかった。警察が呼ばれて、周辺住民も避難させての、回収作業が行なわれた。 万一、下の小部屋に火が回っていたら、大爆発になるところ・・・だったそう。
これも少佐の、ちょっと「メンタル」な部分をほのめかすエピソードなのかもしれない。

Southside House - Wimbledon
そして、その暖炉と入口のドアの間に、
なにげに挟まっているのが・・・げっ、
Burne-Jones(バーン・ジョーンズ)!!

Southside House - Wimbledon
あー、びっくりした・・・。

Southside House - Wimbledon
そして、次回もまだお屋敷拝見は続きますよ。



Southside House(サウスサイド・ハウス)
3-4 Woodhayes Rd, Wimbledon, London SW19 4RJ
オープニング情報と予約 <英文でこのページ

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