Watts Gallery (ワッツ美術館)-改修その後
もうかれこれ4年前になる。サリー州Guildford(ギルフォード)のとなり村、Compton(コンプトン)にある、Watts Gallery (ワッツ美術館)のイメージを、標本箱に詰め込んだことがある。<このページ>
ここが大改修のために閉館する以前、館内に設けられた小さなショップ・スペースで、Kotomiジュエリーを扱ってもらっていたことがある。 その当時は、よくも悪くも古びた感じの、薄暗い地方ギャラリーだった。
ヴィクトリアンの時代からそのまま抜け出してきたような風貌の、高齢の前館長さんが、ギャラリーの老朽化を寂しそうに話していたことを覚えている。この館長さんが引退して、若い新館長さんが登板してから、新しい動きが始まった。
2006年に、地方で忘れ去られたようになっている、建物や文化を復興させる目的の、一種のコンテスト、BBCのTVシリーズ・Restoration Village(「村の復興」)参加プロジェクトに取り上げられ、視聴者投票2位にまで食い込んだ。
もちろん私や、配偶者氏、うちのご近所さん達も、一同でワッツ美術館に電話投票して支援したものだった。
同年、ロタリー・ファンド(文化支援のための宝くじ資金)からの資金援助を受け、修復プロジェクトが立ち上げられる。
2008年には所蔵作品のうちから、バーン・ジョーンズとムーアの作品各一点を売却して、それらも修復基金にあて、美術館を2011年まで閉館しての大改修が、ついに始まったのだった。(このへんの話は、英文Wiki<このページ>からの粗訳。)
予定通り2011年の秋に新装オープンしたのだけれど、私の方で、ギルフォードに鉄道で出て、一時間に一本のバスに乗り換えて・・・というのが、なかなか億劫で、それ以来訪れる機会がなかった。 とはいうものの、いつでもどこか気にかかっていた美術館ではあった。
この2月に突然、ここのギャラリーのショップ担当者の女性が、7年ぶりにメールをくれた。「やっとギャラリー・ショップも充実して、販売力もついてきたので、またジュエリーを扱いたい。」とのこと。 うわぁ、これはこれは、嬉しい話!!
商談にプッシュされて、翌週には、ギャラリーの前に立っていたのだった。
その日は、冬にしては珍しく快晴の青い空。
ギャラリーも、一段と清々しく見える。
メインの展示室は大きな変化はない。
オリジナルのプランに忠実に修復されている。
壁も天井もすっかりキレイになった。
昔は雨の日など、ギャラリーのの隅に、
雨漏り受けバケツが置いてあったりした。
The All-Pervading, 1890, George Frederick Watts
絵画もコンディションによっては、修復されたり、
洗いにかけられたりしたのだそう。
Violet Lindsay, 1879, George Frederick Watts
小品だけれど、この未完のポートレートが目に留まった。
修復で新しく付け加えられた、半地下部分のギャラリー室。
この部屋では、初期の作品や、
彼の使用したパレットや、
彼のデスマスク、といった資料が展示されている。
もう一棟、反対側のウィングにも展示室が広げられて、
ここでは特別展がシーズンごとに企画されている。
(特別展は撮影禁止なので、写真はないのだけれど・・・。)
その特別展のギャラリー室と彫刻室を繋ぐ廊下に、
ワッツの関連の人々の、写真が展示されている。
その横に、一連の修復プロジェクト「The Hope Project」の解説パネルが。
<このページ>のオリジナルサイズで、ディティールを見ていただけることと。
その横に展示されるこのパネルは、
偶然のように降って湧いてきた、もう一つのプロジェクトの話。
この話はまた次回に。
いい味を出していた、20世紀初頭のキャビネット達は、
そのままに、以前の雰囲気をうまく保っている。
それでいて、すっきり見て回りやすい展示になった。
日がすでに傾いてきている。
以前は事務所などが入っていただけの別棟が、
チケット売り場、ショップ、カフェ、
現代作家・グループの企画展ギャラリーになった。
その昔、テーブル一つに、本やジュエリーや小物を並べて、
「ショップ・コーナー」としていた頃とは大違い。
大資本、ナショナル・トラストのショップかと思う。
まだ「お試し期間」なので沢山のお買い上げではないけれど、
壁のジュエリー・キャビネットに、Kotomiジュエリーも
もう並んでいるはず。
その奥にまだショップが続く。
クリスマス前は、ローカルの人たちが、
人混みで車の混雑するギルドフォードに出ないで、
のんびりしたここのショップで買い物をする・・・という、
村の百貨店状態になっていたのだとか。
ちなみに、この界隈、「村」といっても、たいがいな文化的高級住宅地。
「村の百貨店」需要があるのも不思議ではないのだった。
ワッツの妻で同じくアーティストのメアリーが興した、
「コンプトン焼」の伝統はまだ続いていて、
ローカルの陶芸家の作品を中心に、
セラミックを展示販売する部屋。
カフェにもコンスタントにお客さんが訪れている。
ランチとお茶をしたけれど、カジュアルながら、
どちらもハイ・スタンダード。
ルネッサンスというか、復興というか、
物事は、流れが大きく変わる時、っていうものがあるんだなー、
と、7年ぶりに訪れて、嬉しい感慨ひとしきり。
次回はまたここの新プロジェクトの話を。
Watts Gallery (ワッツ美術館)
Down Lane, Compton, Guildford ,
Surrey, GU3 1DQ, United Kingdom
ヴィジター情報は<このページ>
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