Tuesday, 9 April 2013

ヴィクトリアン墓地-1- Brompton Cemetery(ブロンプトン墓地)

今年の冬はとりわけ、天候が悪くて(寒いのはともかくも、雨がちの曇天)あまり、撮影に出る気がしなかった・・・の話を時々愚痴っている。
今ちょうどマイ・ブームなのが「墓地写真」で、この墓地写真、冬特有のの低い日差しが差していてくれると、一段とフォトジェニック・・・になるからなのだった。
愚痴りながらも、なんとかロンドン7大墓地(Magnificent Sevenと通称呼ばれる)の5墓地を撮影済み。
全部済んでから標本箱に詰め込もうか、と、思っていたけれど、ネタがなくなってきたので、このテーマに手を出すことにする。

日本の感覚から行くと「なんでまた墓地?」ということになるだろうが、ヨーロッパではたいてい19世紀の墓地は装飾的で、「別界にいってからの家」というわけではないだろうけれど、建築のミニチュア・ヴァージョンだったりして、様式があるのを観察しているのがなかなか面白い。
ただし、近年は墓地でも入るのに予約ガイドツアーでしか入れないところがある。Magnificent Sevenのひとつ、一番有名なHighgate Cemetery(ハイゲート墓地)は、いまや博物館状態なので、入場は有料かつ予約制。(それもあって、ここはまだ行けていない。)

今回は、まず最初に墓地写真にはまるきっかけになった、Brompton Cemetery(ブロンプトン墓地)のイメージ。
地下鉄District Line(ディストリクト・ライン)の、West Brompton(ウエスト・ブロンプトン)駅とFulham Broadway(フルム・ブロードウェー)駅の中間にあるので、西ロンドンから一番行きやすい、Magnificent Sevenのうちのひとつ。

West Brompton Cemetery
こんな風な、美形天使君達がいっぱい・・・これは通うしかないでしょう、というのではまった、初期の一枚。
Pおじ所有の18世紀の手紙のイメージと、レイヤー加工した。

West Brompton Cemetery
クローズアップ。

West Brompton Cemetery
この彫像も秀麗で目を引いたのだけれど、この墓地でも
一番よく撮影されている彫像のひとつなのだと、後で読んだことがある。
ブロンプトン墓地は1940年建造で、19世紀後半から20世紀初頭にかけてが、
もっとも墓が「装飾的」だった時期。
彫りの美しい彫像は、たいていこの頃のもの。

West Brompton Cemetery
彫像は光の入り方で断然面白くなる。なので、曇り空不満。
建築は、どちらかといえば説明ショット的なので、
光が安定してぼんやりうす曇りの方が撮りやすい、という違いがある。
後ろに見えているのが、チャペル。

West Brompton CemeteryWest Brompton Cemetery
彫像にポストプロセスをかけると、なかなかの雰囲気。

West Brompton CemeteryWest Brompton Cemetery
なので、病み付きになる。

West Brompton CemeteryWest Brompton Cemetery
まるでスポットライトのように、低い夕方の光が差し込む。

West Brompton CemeteryWest Brompton Cemetery
後ろに写っている建物は、グレート・サークルの一角。

West Brompton CemeteryWest Brompton Cemetery
グレート・サークルはこんな風に、19世紀前半のネオ・クラシカルなデザイン。

West Brompton Cemetery
その、ネオ・クラシカルな頃の、つまり18世紀~19世紀前半頃の墓は、シンプルな構造。
典型的なのは、Urn(ツボ)に布が被せられているデザイン。
当時は火葬ではないので、実際に「遺灰(Ash)」をいれるとかいうのではなくて、あくまでも象徴。
英国教会の葬儀祈祷に「Ashes to ashes, dust to dust」(灰は灰に, ちりはちりに)
という1節があり、そこから採られている。
(葬儀祈祷のこの1節自体は、聖書・創世記の「Dust thou art, and unto dust shalt thou return.
=汝、ちりなれば、ちりに帰るべし」に由来する)
被せられている布は、「生と死を隔てる帳」の象徴とも、単純に「服喪」の意とも考えられている。

West Brompton Cemetery
オベリスク型の墓石も時折見かける。
たいてい、19世紀前半(1920-40頃)の、エジプト・リヴァイヴァルの時期のもの。
USAでは、フリー・メイソンと関連付けている場合もあるようだけれど、
UKでは純粋に当時ファッショナブルだったから、ではないかな・・・と思う。
左のようなMausoleum(廟)は、家族や一族の共同墓として使われている。
これは19世紀初頭のネオ・クラシカルなもの。
あと、右のようなケルト十字型は、ケルト由来のUKではよくみられる。
これも、とりわけゴシック・リヴァイヴァルの、19世紀後半に使われたモチーフ。

West Brompton Cemetery
ウエスト・ブロンプトン駅近くの北ゲート側から、セントラル・アヴェニューの向こうにチャペルが見えている。

West Brompton Cemetery
19世紀末のデコラティヴなMausoleum(廟)。

West Brompton CemeteryWest Brompton Cemetery
左は、多分音楽関係者の墓標と思われる。
フルム・ロード側の南ゲートの近くは草ぼうぼうで、自然風。
この後、他の7大墓地を回っていたら、もう森・林状態のところもあり。
このブロンプトン墓地は、まだこれでもコンスタントに、メンテナンスされてきている方なのだった。

West Brompton CemeteryWest Brompton Cemetery
最後にまた、美形の天使君と、夕日の中を歩いていたカラス。


Brompton Cemetery(ブロンプトン墓地)

地図:

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