ヴィクトリアン墓地-1- Brompton Cemetery(ブロンプトン墓地)
今年の冬はとりわけ、天候が悪くて(寒いのはともかくも、雨がちの曇天)あまり、撮影に出る気がしなかった・・・の話を時々愚痴っている。
今ちょうどマイ・ブームなのが「墓地写真」で、この墓地写真、冬特有のの低い日差しが差していてくれると、一段とフォトジェニック・・・になるからなのだった。
愚痴りながらも、なんとかロンドン7大墓地(Magnificent Sevenと通称呼ばれる)の5墓地を撮影済み。
全部済んでから標本箱に詰め込もうか、と、思っていたけれど、ネタがなくなってきたので、このテーマに手を出すことにする。
日本の感覚から行くと「なんでまた墓地?」ということになるだろうが、ヨーロッパではたいてい19世紀の墓地は装飾的で、「別界にいってからの家」というわけではないだろうけれど、建築のミニチュア・ヴァージョンだったりして、様式があるのを観察しているのがなかなか面白い。
ただし、近年は墓地でも入るのに予約ガイドツアーでしか入れないところがある。Magnificent Sevenのひとつ、一番有名なHighgate Cemetery(ハイゲート墓地)は、いまや博物館状態なので、入場は有料かつ予約制。(それもあって、ここはまだ行けていない。)
今回は、まず最初に墓地写真にはまるきっかけになった、Brompton Cemetery(ブロンプトン墓地)のイメージ。
地下鉄District Line(ディストリクト・ライン)の、West Brompton(ウエスト・ブロンプトン)駅とFulham Broadway(フルム・ブロードウェー)駅の中間にあるので、西ロンドンから一番行きやすい、Magnificent Sevenのうちのひとつ。
こんな風な、美形天使君達がいっぱい・・・これは通うしかないでしょう、というのではまった、初期の一枚。
Pおじ所有の18世紀の手紙のイメージと、レイヤー加工した。
クローズアップ。
この彫像も秀麗で目を引いたのだけれど、この墓地でも
一番よく撮影されている彫像のひとつなのだと、後で読んだことがある。
ブロンプトン墓地は1940年建造で、19世紀後半から20世紀初頭にかけてが、
もっとも墓が「装飾的」だった時期。
彫りの美しい彫像は、たいていこの頃のもの。
彫像は光の入り方で断然面白くなる。なので、曇り空不満。
建築は、どちらかといえば説明ショット的なので、
光が安定してぼんやりうす曇りの方が撮りやすい、という違いがある。
後ろに見えているのが、チャペル。
彫像にポストプロセスをかけると、なかなかの雰囲気。
なので、病み付きになる。
まるでスポットライトのように、低い夕方の光が差し込む。
後ろに写っている建物は、グレート・サークルの一角。
グレート・サークルはこんな風に、19世紀前半のネオ・クラシカルなデザイン。
その、ネオ・クラシカルな頃の、つまり18世紀~19世紀前半頃の墓は、シンプルな構造。
典型的なのは、Urn(ツボ)に布が被せられているデザイン。
当時は火葬ではないので、実際に「遺灰(Ash)」をいれるとかいうのではなくて、あくまでも象徴。
英国教会の葬儀祈祷に「Ashes to ashes, dust to dust」(灰は灰に, ちりはちりに)
という1節があり、そこから採られている。
(葬儀祈祷のこの1節自体は、聖書・創世記の「Dust thou art, and unto dust shalt thou return.
=汝、ちりなれば、ちりに帰るべし」に由来する)
被せられている布は、「生と死を隔てる帳」の象徴とも、単純に「服喪」の意とも考えられている。
オベリスク型の墓石も時折見かける。
たいてい、19世紀前半(1920-40頃)の、エジプト・リヴァイヴァルの時期のもの。
USAでは、フリー・メイソンと関連付けている場合もあるようだけれど、
UKでは純粋に当時ファッショナブルだったから、ではないかな・・・と思う。
左のようなMausoleum(廟)は、家族や一族の共同墓として使われている。
これは19世紀初頭のネオ・クラシカルなもの。
あと、右のようなケルト十字型は、ケルト由来のUKではよくみられる。
これも、とりわけゴシック・リヴァイヴァルの、19世紀後半に使われたモチーフ。
ウエスト・ブロンプトン駅近くの北ゲート側から、セントラル・アヴェニューの向こうにチャペルが見えている。
19世紀末のデコラティヴなMausoleum(廟)。
左は、多分音楽関係者の墓標と思われる。
フルム・ロード側の南ゲートの近くは草ぼうぼうで、自然風。
この後、他の7大墓地を回っていたら、もう森・林状態のところもあり。
このブロンプトン墓地は、まだこれでもコンスタントに、メンテナンスされてきている方なのだった。
最後にまた、美形の天使君と、夕日の中を歩いていたカラス。
Brompton Cemetery(ブロンプトン墓地)
地図:
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