Rembrandt House Museum(レンブラント・ハウス博物館)-1-
オランダ語ではMuseum Het RembrandthuisとよばれるRembrandt House Museum(レンブラント・ハウス博物館)。
オランダでも有数の画家レンブラントの住んだ家ということで、かなり観光客にも知られている博物館。有名画家だとリンク先Wiki jpに概要は解説されているので、ここでは割愛して(これはラクでいいや・・・笑)、即ヴィジュアルいきます。
いつもとパターンを変えて今回はファサードから。
1606-07年に、こちらもオランダ黄金期の画家Cornelis van der Voortの建造した家が元になっている。
当時このアムステルダム東地区は「新興住宅地」で、富裕市民層や画家が次々に家を建て始めていたそう。
もともとは大型2階建てクロウステップド・ゲイブルの建物だったが、1627-28年頃に現在のコーニスやぺディメントの付いた、当時最もトレンディなファサードに改装され、上階も付け加えられた。
レンブラント自身は1639年に、13,000ギルダースでこの家を購入。すでに「夜警」(又は、「フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ラウテンブルフ副隊長の市民隊」)等の発注を受けて、経済的にも成功した画家・・・だったのだが、それにしても、この額は高額で、後年に至るまでの分割払いを組み、これが晩年の経済的困窮の遠因ともなっている、と、言われている。
この博物館、ちなみに、入り口とショップ部は左隣のモダーンな建物の中にある。私はこのドアの前に立って「閉まってるのか?」と、じっとドアを凝視してしまった。続々と観光客が隣に入っていったので、すぐに意味は察したが・・・(笑)。
17世紀のアムステルダムの地図の複製が展示されている。
この地図では、南が上になるように描かれているので、現在見る地図とは上下ひっくり返した感じ。
この家のある位置は白丸の付いているところ。
おぉ、アムステルダムの街自体も、星形要塞都市だったんだ・・・と気がついた。
順路はまず半地下のキッチンから始まる。
(曇り日の夕方で、自然光が入らず、今回全体に写真の色味悪し・・・。)
この家は、1656年にレンブラントが破産後、備品とともに競売にかけられ、11,000ギルダースで売却された。
2つの家に分割され、19世紀に至るまで様々な居住者が行き来して、状態はどんどん悪化してゆき、一時は取り壊しのプランも出ていたそう。1906年のレンブラント生誕300年記念・回顧展の折に、荒廃したこの建物は競売にかけられ、アムステルダム市が購入、レンブラント財団を設立・管理することとなった。本格的に修復されて、博物館として開館したのは1911年のこと。1997年に最新の時代考証の成果を反映した、より忠実なインテリアに改装されている。
・・・と、いうその後の歴史からもわかるように、このキッチンも「こんな風であっただろう」という後年の復刻。
レンブラントの場合、画家なので、実際のインテリアが描かれていた作品・素描もあり、それらによるところが多い。
差し押さえ競売時のリストも、部屋にあった家具・備品を知る重要な手がかりになっている。
(それによると、競売リスト上のキッチンの備品が裕福な一家にしては少ないので、基本生活用の鍋・食器類はリストに入っておらず、小さい家に引っ越したレンブラント達が、持ち出すことを許されていたのではないかと考えられている。)
また、このキッチンの左カウンターの手前にあるドアから、中庭に出るとその先にトイレがあった。ここはゴミ捨て場も兼ねていたらしく、1997年の改装時に、このゴミ捨て場に捨てられた様々な生活用品が発掘され、それも備品類の時代考証に役立っている。
この時代のアムステルダムの住居では、自然光でできる限りの家事作業ができるように、中庭に回廊を設置することは珍しいことではなかった。ここでも回廊の屋根の高さを、1643年以前に上げていることが確認されている。そこで、前述のレンブラントの「夜警」は、ここのスタジオには収まらない大作だったので、この中庭部の回廊で描かれたものではないかと推測されているのだった。
典型的な17世紀のワイングラスで、Rummer(ラマー)と呼ばれる。
キッチンの一角にあるメイドのベッド
寒いオランダやドイツでは、キャビネットの中にベッドを作る習慣がある。上下2段ベッドで、親子が眠る・・・なんてこともザラにある。すべて保温効果のためで、プライバシーなどはない。まぁ、そもそも「子孫繁栄行為」は(18世紀以前は)もっぱら真昼間に人気のない一角や、(田舎の場合)屋外で為されることが多かったので、ベッドは純粋に「寝るためのもの」。
昔の人間は現在より小柄だったとはいえ、当時のベッドが短すぎる・・・というのはイギリスでもよくある話。
クッションを背に当てて上半身を起こして寝ていて、まっすぐ寝ることを「不吉」と考える風習があったともいう。
治安の悪い時代のこととて、いつでも飛び起きて臨戦態勢を取れる(あるいは逃げ出せる)ように、というのが一因と聞いたことがある。
また、当時のベッドは、底にロープを張り渡したところに、藁や羽の布団を重ねた上に寝ていたので、寝ているうちに腰が沈み、おのずと上半身起こしたような姿勢になってしまう、というのも、中世の生活を再現してみたTV番組で聞いた話。いずれにしても・・・腰痛の原因になるよな・・・。
入り口ホール。床は高価な大理石張り。
この部屋は、レンブラントの画商としての「店先」でもあった。
上から下まで彼自身や弟子の作品が展示されていた。
現在でもレンブラントと、同時代の画家の絵が展示されている。
私は芸大出身だけれど、興味の対象が建築・インテリア・装飾史なので・・・絵画ソ無視。
壁面装飾品としか見ていない、という説もあり・・・(笑)。
同じ部屋の入り口ドア。この向こう側で私は立っていたぞ・・・。
隣にあるAnteroom(控え室)が「レンブラント商会」のメイン・オフィス。
ここが実際の商談が行われた部屋。ここの壁にも彼の作品、弟子の作品、それ以外にも取り扱っていたイタリアやフランダースの画家の作品が展示されていた。
競売リストに「大理石ワインクーラー」が記されているので、ここで購入・発注客をワインで接客していたことが伺われる。
遠来客の宿泊用に使われたベッドも、競売リストに記されているが、ここにあるものは、修復時に導入されたほぼ同様の17世紀箱型ベッド。
暖炉の大理石飾りと見えるのは、実は木製にトロンプイユ塗装した「フェイク」。当時は安上がりの代用品として人気があったのだとか。とても巧妙に仕上げられているので、手で触って冷たくない、という点でしか識別出来ない。
Anteroomの奥にある、エッチング・プリント室。
競売リストでオーク材のプリント・プレスがあったことが知られている。
床は、18世紀に難破した17世紀の船に使われていたタイルが、
近年の修復で使用されたもの。
エッチングはそもそも、甲冑装飾用の金属腐食技術から進展して、
レンブラントの50年ぐらい前に、フランスから広まった技法。
彼自身この技法のエキスパートだった。
実際にスタッフが、デモンストレーションして見せてくれる。
インクを銅版に塗るのに、(聞き間違いでなければ・・・)犬の皮をつかった「タンポ」を使う。なぜ「犬」かというと、犬は皮膚発汗しない(口でハァハァやって、体温調整する)ので、毛穴が詰まっているため、皮の毛穴からインクが中の詰め物に吸い取られないからだ、とか。
余分のインクを布で拭き取り、最後は手の平にチョークをつけて拭き取る。このプロセスで、最終作品の陰影の具合を調節できるため、「光と影の画家」の本領発揮のプロセスでもある。
湿らせた紙を乗せて、プリント・プレス機にかける。
レンブラントと妻サスキアの、ポートレートの出来上がり。
弟子に刷らせて、どんどん売ったとか・・・?などと考えていたが、
実際にはインクの拭き取りなど、微調整でプリントを仕上げる必要があるので、
結局のところ、全プロセス彼自身で仕上げていたのだそう。
建物の新館部最上階に、エッチングの展示室がある。
これは、そこで展示されている銅版と刷り上りの対比。
エッチングの話の成り行きで、順路からは外れるけれど、
エッチング作品で目に付いたものを載せてみよう。
三本の樹 1643年。
このインクの拭き取りは特に、微妙・・・。
風車 1641年。
ゴルフ・プレーヤーズ 1654年。
道路掃除してるのかと思ったら、ゴルフ(笑)。
窓辺に寄りかかった自画像 1639年。
15世紀ルネッサンス・イタリアの画家ティツィアーノの
<この絵>に対抗して、このポーズを自画像に使った、と考えられている。
ヤン・シックスの肖像 1647年。
なんだか、ガイドブック読んでたら色々興味深い話が出てきて・・・
そこにまた余計な話付け足すものだから
いつまでたっても終わらない(ラクでいいや・・・と思ったのは最初だけー)。
なので、以降は次回に。
Rembrandt House Museum
(レンブラント・ハウス博物館)
Jodenbreestraat 4,1011 NK Amsterdam, The Netherlands
開館:毎日10:00pm~6:00pm
(アムスで6時まで開いている博物館はここぐらい。
ゆえに、後回しになって、ついつい夕方になってしまう。)
閉館:女王(国王)誕生日:4月30日(2013年)、4月27日(2014年以降)
クリスマス:12月25日、新年:1月1日
入場料:大人€12.50
その他細かいディスカウント等は英文で<このページ>
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