Searching for Ophelia Project(オフェーリアを探せプロジェクト)-1-
予告通り、今回はMillais(ミレー)の「オフェーリア」の背景が描かれた場所を探して、Hogsmill(ホグスミル)川を散策したときの写真。
ラファエル前派を代表するテート・ブリテン所蔵のこの絵画は、かなり有名なのだけど、「どんなんだっけ?」という方のために(なにしろ、歴代いろいろなヴァージョンが描かれているので・・・)イメージはこれ。
Image via Wikimedia Commons
オフェーリアはシェイクスピアの「ハムレット」に登場するハムレットの恋人。
殺された父王の復讐のために狂気を装ったハムレットに、冷淡に拒絶され、父を(誤って)ハムレットに殺害されたり・・・で、気が狂って、小川に落ちて死んでしまう。
とまあ、ストーリーで書くと陰惨なのだけれど、このはかない悲劇のヒロインの、「花冠(を作っていて、水に落ちた)とドレスとともに水にたゆたう乙女」のイメージが、(特に19世紀ラファエル前派の)画家達のイマジネーションをインスパイアして、さまざまなヴァージョンで描かれている。
John Everett Millais(ジョン・エヴァレット・ミレー)の「オフェーリア」は1852年にロイヤル・アカデミーに出展された作品だが、実際に描かれたのは1851年のこと。
オフェーリアのモデルになったのは、後に同じラファエル前派のサークルのロセッティ(Dante Gabriel Rossetti)と結婚する、エリザベス・シダル(Elizabeth Siddal)。
モデルと背景は別々に描かれて、1951年の夏にまず背景の小川のシーンが、「Surrey(サリー)州のHogsmill(ホグスミル)川」で5ヶ月近くかけて描写され、その後既に冬になってから、モデルのエリザベス・シダルが水に浸かっているシーンが描かれた。
ロンドンのミレーのフラットのバスタブに湯を張って、ドレスを着て水に浸されるのだが、水が冷たくならないよう下からオイルランプで温めたとか。しかし、ミレーがオイルが切れているのも忘れて、描く方に集中してため、水浸しの彼女はひどい風邪をひいてしまった。 憤慨した彼女の父親が、ミレーに対して慰謝料(あ、まさしく医者料)を請求した・・・という話が伝わっている。
(この辺の話は、英文Wikiのこのページに)
一方、背景の小川のシーンが描かれた、「Surrey(サリー)州のHogsmill(ホグスミル)川」というのは、実は我家からさほど遠くない地域を流れている川。(我家のあたりは、Surrey(サリー)州なのだが、1965年にロンドン自治法でロンドンに加えられた。)
Ewell(ユーウェル)に端を発して、10キロ弱を流れて、ご近所のKingston(キングストン)で、Thames(テムズ)川に合流するこの川の、一体「どこ」でミレーがこれを描いたのか?というのが、諸説わかれていた。
上流のEwellの近く説、Surbiton(サービトン=私の街)近く説。
ミレーとほぼ同じ時に、近くの平原で「The Hireling Shepherd」を描いた、同じラファエル前派の友人画家、William Holman Hunt(ウィリアム・ホルマン・ハント)との、2人の日記・手記・手紙が情報ソース。
1997年にOld Malden(オールド・モールデン)在住のBarbara Webb(バーバラ・ウェッブ)という女性が、18ヶ月かけて調査した結果、このスポットがオールド・モールデンのマナー・ハウス領の下の土手であったことを突き止めた。
<ブックレット><英文解説><2010年のテレグラフ紙の記事>
決め手となったのは、文書保管所で1851年にモーデンの牧師が、このミレーの作品について言及していることを発見したということだそう。
と、ここまでが、長い前置き。
ちかごろ、暖かくて天気もいいので思いついて、ハイキングを兼ねて、自分でもこの「オフェーリア探し」をやってみることにした。
まずは、うちのご近所から。
天気のいい週末、散歩に出かけて「そういえばうちの上の方に小川があったな。」
と思い出して向かったのがここ。この段階では「サービトン近く説」しか知らなかった。
サービトニアン(サービトン人)は、「ミレーはサービトンの小川でこれを描いた」と、
超単純化したストーリーを信じ込んでいる・・・。
「ふむ、コンクリートで固められているではないか。」
水のイメージのコラージュ。
写真を撮ってたら「今年は水が少ないでしょ」と話しかけてきたおじさんあり。
ちょっとお喋りして「これって・・・Hogsmillですよね?」と尋ねたら・・・そうではなかった。
「もう少し先だよ、10分も歩けば出るよ。」
ふむ、ここはサービトン・ストリームという支流の一つだったのか・・・。
だんだん、小川らしくなってきた。
このあたりで、すでに「こんな感じ、こんな感じ・・・。」という気分になっている。
まぁ、イギリスの小川はどこでもこんな風・・・と言われればそれまでなのだが(笑)。
ここはまだ、サービトン・ストリームで、もう少し先でHosmill(ホグスミル)川に合流する。
この地域は駅でいうなら、サービトンの隣のBerrylands(ベリーランズ)と、
そのまた隣のNew Malden(ニュー・モールデン)の間にある、自然保護地区に入っていく。
そして、これがホグスミル川。先ほどのストリームより、幾分川らしくなっている。
この第一回目散策はまだ、3月の初旬。まだ冬っぽさが残っている。
中に、新緑が芽吹き始めたころ。
例年3-4月は雨がちなことが多いのだが、どうしたことか今年はカラカラ天気。
川の水量も至って少ない。春から既に「庭の水やり制限」の出ている地区もあるのだとか。
Drake(ドレイク=雄鴨)達。
この時期まだカップルになるには早いのか、雄ばかりよく見かける。
鉄道橋をくぐって、キングストン側に流れていく。
花の写真等撮ったりして、充分「光合成」もしたし、満足して、
「ここがかなりオフェーリア的風景」と勝手に断定。
その後はのんびりしたベリーランズの住宅街をてくてく歩いて・・・、
サービトンの鉄道橋を越して帰ってきた。
ちなみに、私がうろうろしていたのはこのエリア:
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帰ってきて、いちだんと興味が出てきて、Net検索を始めた。 そうしたら、色々もっと詳しい情報が見つかった。
そして解った・・・「う~ん、全然下流だったよ・・・。」
そこで、再び上記の情報を元に、オフェーリア探索に行ってみたのが、昨日の話。と、いうわけで、続編は次回に^^。
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