Lincoln's Inn (リンカーンズ・イン)-2-
引き続きLincoln's Inn (リンカーンズ・イン)より、今回はNew (Great) Hallのイメージを中心に。
普段は公開されていないこの建物の中を見るのには、月に一度のガイド・ツアー(ブロンズ・ツアー)に参加した。
情報は、前回の標本箱に貼ったリンクを参照ください。
このチューダー・リヴァイヴァル様式のホールは、19世紀にメンバーが増加して、前回のOld Hallでは小さすぎるために、新たにより大きなホールを建造することとなった。
設計はPhilip Hardwick(フィリップ・ハードウィック)で、1843年に施工、1845年に完成して、10月末にヴィクトリア女王によってオープニングされた。
18mを超える、壮大なホール。
この階段を上がった所が入り口。
ホールは、写真の左手側。正面に当たるのはライブラリーで、ホールと同時に設計された。
1872年に増築されて、現在に至る。
入り口を入って、左に折れるとホールの入り口。
外観もそうだったが、内部も「19世紀チューダー・リヴァイバル」と聞かなかったら、
本当のチューダー建築かと思い込んでしまう・・・。
パネル装飾のディティール。
ここのステンドグラスや、パネルもすべてベンチャー(法廷に出る資格のある、評議会メンバー)の紋章。
入ってきた入り口側を見たところ。
入り口の上のフレスコ壁画は、George Frederic Watts(ジョージ・フレデリック・ウォッツ)の、
Justice, A Hemicycle of Lawgivers(司法、立法者の半円)で、1859年の完成。
ウォッツは、イタリア滞在でインスパイアされたフレスコ画作品を制作したかったのだが、
残念ながら、そのようなプロジェクトに、めぐり合うチャンスが得られなかった。
ここのホールの壁を見た彼は、フレスコ壁画の作品に最適・・・ということで、無償製作を申し出た。
しかし、完成の折には「報酬」としてではなく、「お礼」として、
トロフィー一杯分のソブリン金貨が贈られたそうだ。
後年オークションに出てきた、このトロフィーは、リンカーンズ・インに買い戻され、
現在も記念に保管されているとか。
そのディティール。
歴史上(伝説上)の立法者を図像化したもので、旧約聖書のモーゼ、ギリシャ神話の冥界の審判者ミーノス、
古代ギリシャの立法家ドラコン、ギリシャ七賢人のソロン、東ローマ帝国のユスティニアヌス1世、
アルフレッド大王、モハメットから、孔子もいるらしい。
モデルになったのは、ウォッツの友人たちなので、誰がどのモデルになったか判別のつくものもあるとか。
詩人のテニソンが、冥界の審判者ミーノスだったそう。
最上段に座る3人の女神は、天を仰ぐ中央の女神が「真理」の象徴、
それを見上げる右側の女神は「正義」、それに目を背ける左側の女神が「慈悲」の象徴。
「正義」と「慈悲」のバランスの上に、判決は下される・・・という、立法者の理想を表している。
入り口から、反対側のライブラリーを覗く。
その途中にある、メーンバーのための小ホール。
グレート・ホールを出てから、New Square(ニュー・スクエア)を散策。
ニューといっても、ここで言うところの「ニュー」は18世紀の建造のこと。
その先にはアーチの路地があって、王立裁判所の裏の道に面している。
これは、リンカーンズ・インのマーク、millrind(ミルリンド)で、石臼の留め金具を表している。
ここの敷地内では、あちこちでこのマークが使われている。
これは鉛製の植木鉢カヴァーに付いていたもの。
正式の紋章では、下のイメージの左上の、ブルー地にゴールドのミルリンド、左上の区画にゴールド地、
パープルのランパント(立ち上がった)ライオン。
(なぜだか、ここでは赤ライオンになっているけど・・・本当は紫ライオンが正式。)
Photo by : Marc Baronnet @Wikimedia image
ちなみに、ここではイギリス(そして、ウェールズ)の4Inns of Court(法曹院)の紋章が集められている。
右上の銀地(紋章上では白は銀を示している)に赤十字、金のラムはミドル・テンプル、
右下の黒地にランパントの金グリフィンはグレイズ・イン、
左下のブルー地に銀のペガサスは、インナー・テンプルのもの。
最後に、もう一度グレート・ホールの外観と・・・このころ咲き始めていたクロッカス。
そう、ロンドンは、もうすっかり春で、水仙や桜がほぼ満開。
なので、次回は春の花のイメージを予定中。
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