ハンガリー民族誌博物館 (Museum of Ethnography)-1-
前々回のSkanzen(シュコンゼン)屋外博物館に引き続き、ハンガリー各地の民族衣装や民芸を主な展示内容とするハンガリー民族地誌博物館 (Museum of Ethnography)。英文ガイドブックの中には”Ethnographical Museum”と表記されている場合もあれば、ハンガリー語では”Néprajzi Múzeum”(ニープラジ・ムゼゥム)ということになるのだが、すべて同じミュージアム。
コスチューム・マニアの私としては、「いかにもハンガリー」という装飾的な民族衣装に惹かれていて、ここの博物館もブダペストでは、外すことのできなかったところの一つ。
「いかにもハンガリー」と一言で書いてしまうが、実際にはもっと複雑なことになっている。
16世紀前半から1世紀半に渡って、オスマントルコ帝国に占領にあったため、トランスダニュビア地域やグレート・プレーン地域のハンガリー人口が流失していってしまった。トルコ支配から解放された、17世紀後半から18世紀にかけて、その地に周辺諸地域からさまざまな民族が、先のハンガリー人口流出を補うかのように移住してきた。
このようにして、ハンガリーは民族の「標本箱」状態になっていったからだ。
Transylvania(トランシルヴァニア)のサクソン(ドイツ)系未婚女性のコスチュームのペンダント。
ペンダントというか・・・胸当というか(笑)、とにかく豪華で目を引く。
金属の薄板を打ち出したもののようなので、実際にはそれほど重いものではないのだろう。
全体像。女性がベルトからスカーフを提げているのは
「私は売り出し中です」、つまり未婚女性を表すものなのだと、どこかで読んだな・・・。
こういったコスチュームは、普段着ではなくてあくまでも「晴れ着」。
教会での儀式や行事の時に、精一杯着飾って参加する。
____________________________
こちらは、刺繍の胸飾り。Torockó(トゥーロツコ)の婚礼衣装の部分。
その全体像。
メンズのコスチュームの、カラフルなフェルトのアップリケ装飾もとても印象的。
同メンズ・コスチュームのディティール。
刺繍、鈎針レース編み、フェルトワークと、さまざまな素材テクニークが駆使されている。
_____________________________________
Krakovány(クロコヴァイ)地区のスロヴァキア系既婚カップル。
イギリス・チューダー期の男性コスチュームの「コッドピース」というのも・・・たいがいなものだが、
この男性コスチュームの、ハンカチをなぜまた「ここ」に収納するのやら・・・(笑)。
______________________________________
このビーズ編みのネックレスは、Hunyad(フンヤッド)地域のルーマニア系のコスチューム。
その全体像。ブラウスの刺繍が見事・・・。
______________________________________
こちらはCsik(チック)地域の既婚カップルのコスチューム。
______________________________________
Martos(マルトシュ)地域のカップルのコスチューム。
そのディーティール。 刺繍、ドローン・ワーク、レースが、幾重にも重なっている。
「売るため」のデザインではなくて、自ら身につける「喜び」のためにハンドメイドされたものは、
どこまでも手が込んでいて感動的ですらある。
_______________________________________
Sokac(ショカツ)地区の婚礼コスチューム。
男性のつけている「エプロン」。
この男性のコスチュームも、前出のMartos(マルトシュ)地域の男性のコスチュームも、
騎馬民族系でない「農業系」の印象。袖や裾口が広くて、これでは馬には乗れまい(笑)。
なので、どことなく、おっとりしていて「可愛らしい」印象を受けるのだろう。
花嫁さんの「カブリモノ」後姿。
花嫁さんのスカートのディティール。
色々な素材とテクニークを組み合わせるのが、クリエイティヴィティ。
________________________________________
ハンガリーを代表する最もきらびやかなコスチュームは、ハンガリー北部に位置するMatyó(マテョー)地区のもの。
華やかな刺繍と、袖口の広い独特の男性コスチュームが、この地域ならではのもの。
Matyóの名の由来は"Mátyás"(マーチューシャ)王で、
王がこの地区に「自由都市」の地位を与えたという伝説に由来するのだとか。
刺繍のディーティル。
上着も、一面に金糸銀糸で覆われている。
これが男性のコスチューム・・・おみごと・・・。
広口の袖といい、スカラップ刺繍の入った襟といい、これもなんだか愛らしい男性コスチューム。
ハンガリー民族地誌博物館 (Museum of Ethnography)
住所:1055 Budapest, Kossuth Lajos tér 12
開館: 火曜~日曜(月曜閉館) 10:00am - 18:00pm
入館料:大人1000HUF( £3.3)、 写真撮影料 300HUF (£1) 2011年春現在。
View Larger Map
Labels: 場所
<< Home