Tuesday, 3 May 2011

ブダペストの街-5- 建築ディティール・後編

U.K.はやっと今日から日常に戻る。先々週末はイースターで金曜から月曜まで、たいてい休み。先週末は、金曜がロイヤルウェディングの祭日で、昨日のメィ・ディ祭日まで、これまた4連休。天気も上々、ロイヤル・ウェディングも大好評で、U.K.は久々に(?)Happyな気分で満ち溢れている。
世事とはほとんど関係ないところで生きている私でも、一泊したLong MelfordのB&Bで、ロイヤル・ウェディングの録画をTV見物。そして、皮肉屋の私でも、Duchess of Cambridge(ケンブリッジ女公爵=プリンセス・ケートに下賜された新称号)の、実に自然で聡明な「しっかりもの」ぶりに最大限の好感を持つ。時代が好転しつつあることを垣間見る。こんなにステキな女性を生み出すことのできるU.K.は、まだまだ大丈夫だ・・・と。 心からの祝福を贈りたい。

標本箱の方は、いまだブダペスト滞在中・・・一向にU.K.に戻ってくる気配はない・・・(笑)。今回は引き続き建築のディティールなど・・・前回途中で寝てしまったのでね。
Jak Church
Vajdahunyad Castle(ヴォイダフンヤッド城)内のJák Church(ヤック教会)。
(Google Translateでハンガリーアルファベットも打てれば、発音もしてくれることを発見・・・目からウロコ)
ロマネスク様式の典型(イギリスだとノルマン様式と呼ぶ)。
13世紀初期のJák地区のベネディクト修道院を忠実に再現したもので、城と同じ19世紀の建造。

Jak Church
ちなみに全体像はこんな風。

Fishermen's Bastion
ブダペスト標本箱の最初に詰め込んだ<このページ>Fishermen's Bastion(漁師砦)も、
そういえば、ロマネスク様式。これも19世紀建造なので、ネオ・ロマネスク様式といえる。

Fishermen's Bastion
そのFishermen's Bastionの回廊。いかにもロマネスクの修道院といった感じ。

Vajdahunyad Castle
これはVajdahunyad Castle(ヴォイダフンヤッド城)に戻って、バロック様式の方のウイングの屋根。
そもそもこのお城<全体像>はハンガリー人(マジャール人)がこの地に到来した896年からの、
ミレニアム(千年祭)を記念して1896年に建てられた建築複合体。
なので、ロマネスク-ゴシック-バロックの3様式を、それぞれの城と教会に使用している。

そもそも・・・19世紀後半のスタイルは「なんでもあり」。18世紀から19世紀初頭にかけてのネオ・クラシカル様式の、グレコ・ローマン式のシンプルで、壮大な「中央集権的」な様式からの反動。中世やらバロックやら、デコラティヴで、かつ、地方性のある様式が盛り込まれていった。特にこの頃、ロンドン・パリなどのヨーロッパ大都市での「国際見本市」が、大規模に開催されるようになった。そこに出品する栄誉を獲得するべく、ヨーロッパ各地の製造業者は、「これでもか、これでもか・・・・」というぐらい、目新しい奇抜なデザインを競い合うようになる。(これはもっぱら装飾品の小物の話だが、建築においてもほぼ同様。) 目新しい奇抜な・・・といっても当時のデザイナーの発想は、歴史的デザインの継ぎはぎで、いかに自分達の工場・職人が最高級の技術を持っているかを「見せびらかす」ためのもの。なので、往々にして、てんこ盛り装飾カタログ状態に陥ってしまい、かなりグロテスクな・・・ものもある。
あ・・・これは建築・デザイン史の余談。話を戻そう・・・。
Hungarian Academy of Sciences
ハンガリー科学アカデミーのファサード。
1962-4年建造のネオ・ルネッサンス様式。ネオ・クラシカル様式の「コラム」を残しながらも、装飾的。

Hungarian Academy of Sciences

Hungarian Academy od Sciences
ディティールが秀麗。


これは、どこだったか覚えていない。ごく「普通の」一般建築。
ヘルメス神が顔を出している、ネオ・ルネッサンス的なファサード。


これも「普通の」住宅のバルコニーにこんな「神体」がおっ立っている・・・。
この写真でも解るように、下町の建物の状態はかなり荒廃している。
かつての高度な装飾建築を維持できるだけの経済体制を、旧社会主義国のハンガリーは持ち合わせていないのだろう。
自由主義経済を謳歌したのもつかの間、2008年以降のクレジット・クランチで、
深刻な経済打撃を受けた国の一つだとも聞いている。


まぁ、逆に考えれば、効率第一主義の社会主義体制の中を、
これだけの建造物がコンクリート・ビルに置き換えられずに、よく生き延びたものだ・・・と、感心もする。

Buda's Old Town Hall
生き延びた・・・といえば、このBuda側のOld Town Hallのディティール。
建物自体は18世紀の建造だが、ベイウィンドウ(出窓)は、ここに建っていた中世建造物から「リサイクル」された。

Buda's Old Town Hall
ディティール。

The Old Town
屋根にはOld Townの象徴のような、たまねぎ屋根のタワー。
このたまねぎ屋根(Onion dome)典型的なロシアのデザインなのだが、
東ヨーロッパからドイツにかけて、また、中東やムガール帝国期インド、中央アジアにまで広まっている。
調べてみたが、いつ、どうしてはじまったのかは、諸説あって明確ではないよう。
私的にはノスタルジックで、妙に心惹かれてしまう^^。

Church on Papnovelde Utca
最後は、アパートメント近くの、Papnovelde Utcaに建つ教会。
(名前も特に知られていない地区教会なのか、内部の公開もされていなかった)
オレンジ~イエロー系に彩られることの多いブダペストの建造物の中でも、
オレンジ・ブラウンの壁のコントラスト、また、緑青のドーム屋根のコントラストが独特でとても美しい。

Church on Papnovelde Utca
ルネッサンス~バロック様式のファサードは「あぁ、コンチネンタルに来たんだなぁ」という感慨。
(そう、イギリスでは、まず見かけることはない。) ブダペスト礼賛^^。

次回は繁華街Váci utcaの近くの19世紀建造の、現在は閉店してしまったショッピング・アーケードPárizsi Udvar(パリシィ・ウドゥヴァル)のイメージ。史上最も美しいアーケードの、密やかな眠り・・・。

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