Anglo-Saxon Jewels (アングロ・サクソン期のジュエリー)-Ashmolean Museum (アシュモリアン博物館), Oxford
引き続きOxfordより、Ashmolean Museum(アシュモリアン博物館)のイメージ。
ここは、ちょうどミニ大英博物館+ミニナショナル・ギャラリーといった感じで、世界中からの考古学発掘品やら、絵画やら、ありとあらゆるものが収蔵されている。
2006年から、ここも大改装のため3年近く閉められていたが、2009年の11月に新装再オープン。オープン直後の12月頭に駆けつけたのは、ここのアングロ・サクソン・ジュエリーのコレクションを、ぜひ見てみたかったから。
随分前になるが、中世ヨーロッパのジュエリーのイメージを標本箱に詰め込んだことがある。<このページ>
その時に「『中世』というと、おおよそ11-14世紀」と書いたのだが、イギリスでは1066年のノルマン征服以降のノルマン王朝以降を「Medieval(中世)」として呼びならわしている。それ以前の時代は征服されたアングロ・サクソン王朝の時代で、弱体化したローマ帝国軍が次第に撤退していった5世紀初頭から11世紀まで。この時期も厳密にいうと「中世」に入るのだが、「初期中世」「Dark Age(暗黒時代)」などとも呼ばれている。
なにが「暗黒」かというと・・・実はあまりどんな暮らしだったかが解りにくいから、でもある。
レンガを多用した建造物を残したローマ人達、大陸のロマネスク石造建築技術を持ち込んだノルマン人達の遺跡ははっきりと残っているわけだが、現在のデンマーク・オランダあたりからイギリス東海岸に移住してきたアングロ・サクソン人の住居は大半が木造だったので、ほとんど明確には残ってはいない。およそ7つの王国に分かれていて、王といえども部族長程度の権力。まだまだ石造の城を築けるまでには財力・権力は整っていない。教会や修道院の一部に、アングロサクソン石造建築が残されている程度。
ここ何十年かの考古学テクノロジーの進化があってはじめて、木造住居での暮らしぶりが徐々に明らかにされるようになってきたところ。
その、まだまだ謎の残るアングロ・サクソン人なのだが、移動民族系の伝統なのか、ジュエリーに関してはちょっと「うるさい」。つまり、発掘品の中で最も目に付くのはゴールドやガーネットを多用した、大型のジュエリー。主に王や戦士といった、男たちを飾るためのジュエリーは、豪華で剛毅。
大英博物館にも、多数国宝級が収蔵されているが、今日はアシュモリアン博物館収蔵品の中から展覧してみよう。
Alfred Jewel Anglo-Saxon 871-899, cloisonné enamel, North Petherton, Somerset, England
アルフレッド・ジュエル、アングロサクソン期 871-899年
アルフレッド・ジュエル、別の角度から。
周りのゴールド装飾部に「AELFRED MEC HEHT GEWYRCAN=Alfred ordered me made」ーアルフレッドが命じて(私を)作らせた-の文字が浮き彫りにされているため、アングロサクソン七王国の一つウェセックスのアルフレッド大王の時代の作に帰されている。
何であったかはいまだにはっきりとは解らなくて、聖書を読みやすくするために使う「ポイント棒」の持ち手だったのではないかという説が有力。
エナメルの上にクリスタルという凝った作り、側面にまるで呪文のように刻み込まれた文字といい、通常パターンがほぼ決まっているアングロサクソン・ジュエリーの中でも、繊細で秀逸な作品。
Minster Lovell Jewel Anglo-Saxon 871-899 Minster Lovell, Oxfordshire, England.
ミンスター・ロベル・ジュエル アングロサクソン期 871-899年
「例外」から初めてしまったが、「典型」はこれ。サイズは10センチぐらいでかなり大型。このようなゴールドの幾何学模様+ガーネット象嵌が典型的な「アングロサクソン」スタイルの一つ。このタイプは・・・もう数え切れないぐらいある。
「ディスク」と称されるのは、こういった10センチ級のもの。詳しくは知らないのだが、ブローチの金具が付いていないのだと思う。なので、何にどうやって使われたかは明確には解らないのかもしれない。これより小さくてブローチ金具が付いているものに関しては「ブローチ」とたいてい表記されているので・・・。
Jewelled disc brooch 500-600 Anglo-Saxon
ジュエルド・ディスク・ブローチ アングロサクソン期 500-600年
そう、これが明らかに「ブローチ」の方で、5センチ位。
Jewelled disc brooch 500-600 Anglo-Saxon
ジュエルド・ディスク・ブローチ アングロサクソン期 500-600年
Frankish disk brooch 500-600
フランキッシュ・ディスク・ブローチ 500-600年
Jewelled cross shaped pendant Anglo-Saxon 600-700, Ixworth, Suffork, England
クロス型ペンダント アングロサクソン期 600-700年
Clasp Frankish 600-700
クラスプ フランキッシュ 600-700年
縦長安全ピン型のブローチをローマ期以来フィブラと呼ばれる。これも典型的アングロサクソン・ジュエリーのデザインの一つ。
モチーフは北欧神話オーディンの使者Raven(ワタリガラス)。上記のクロスと全く同時代だが、ちょうど異教からキリスト教への移行期で、どちらのモチーフも使われている。中には一つのジュエリーの中に両方がえがかれているものもある、とは、最近TV歴史プログラムで知った話。興味深い・・・。
Clasp Frankish 600-700
クラスプ フランキッシュ 600-700年
アングロサクソン期のジュエリー、バックル、ベルトエンド、ビーズなど。
左下の「蛇」も典型的なアングロサクソンのモチーフ。
アングロサクソンとフランクのジュエリー、ベルトエンドなど。
最後に、一番美しい「お宝」・・・。
Crystal ball Anglo-Saxon/Frankish 600-700
クリスタル・ボール アングロサクソン、またはフランク。 600-700年
何に使われたのか、教会の装飾品だったのだろうか・・・?
失業中の小父さんが、暇に任せて金属探知機で農地を調べていて、アングロサクソン・ジュエリーを発見。考古学者達が本格的に発掘したところ、出るわ出るわ・・・イギリス史上最大の「お宝発掘」となった。そのニュースをYoutubeから。現在はバーミンガム博物館と大英博物館で所蔵・・・だったはず。
アシュモリアン博物館より、次回はもっと新しいジュエリー。リングと時計のコレクション。
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