John Singer sargent (ジョン・シンガー・サージェント)-Tate Britain と「サージェントと海」展
ひき続きTate Britain (テート・ブリテン)から、今日は私の好きなJohn Singer Sargent(ジョン・シンガー・サージェント)のイメージ。
彼は前回の19世紀イギリス絵画のジャンルに属するのだが、特に「古典主義」でもなければ「ラファエル前派」の影響も大して受けていない。特にドラマや伝説を描いたわけでもない。純粋に「肖像画家」と考えていいだろう。
肖像画家は現代で言えば、ポートレート写真家のようなもの。政府関連の建造物に収める絵画を描くまでに社会的に認知されるのでもない限り、この肖像画のコミッションを受けるのが、当時の画家の一番の収入源。
サージェントの流麗なタッチは、この肖像画のジャンルでも秀逸、ファッショナブルでトレンディーであったともいえるだろう。
Tate Britain(テート・ブリテン美術館)にも彼の作品が数々収蔵されているが、まずはその中から・・・。
テート・ブリテンの中でも代表作の一つ。イギリスの夏、長く続く黄昏時の、涼しく青ざめた空気までもが写しとられている・・・。
当時としては、あまりにも「色っぽ過ぎる」というので、スキャンダルになった作品の、これは習作ヴァージョン。完成作のほうはN.Y.メトロポリタン美術館所蔵。パリでのこの絵画にまつわるスキャンダルが原因とも言われているが、サージェントはイギリスに活動の場を移動する。Welcome to Londonである(笑)。
シフォン、タフタ、ジョーゼットといったドレスの生地の質感の表現は、いつもながら・・・お見事。
Tate Britain収蔵の中の私の「お気に入り」。彼の肖像画は「実際以上に美しく描く」と言われているが、この親子の表情の華やかなこと・・・。
うーん、どうしてグレイの上にクリームのハイライトのタッチを入れるだけで、この少年の上着が「ベルヴェット」であることが表現できるのだろうか・・・。ラファエル前派やギュスターヴ・モローは大好きだが、もし自分が誰のように描けるようになりたいか(なりたかったか)というと・・・サージェントなのだ・・・。
こちらも、クリーム地はタフタに、ボルドー地はヴェルヴェットに描き別けられている・・・。
ドレスの下に着ているペチコートの量感まで伝わってくる。
この後のイメージは、Tate Britain所蔵のものではないが、サージェントの私の「お気に入り」を羅列してみよう。
Fumée d'Ambris Gris 「灰琥珀の煙」
The Countess of Rocksavage 「ロクサヴェージ伯夫人」
Ellen Terry as Lady Macbeth 「エレン・テリー演じるマクベス夫人」
Lord Ribblesdale 「リブルスデール男爵」
Portrait Of Carolus-Duran 「カルロス・デュランの肖像」
多分・・・コスチュームに惹かれているんだろうな(笑)。
この肖像画の天才サージェントなのだが、晩年は肖像画からは「引退」して、主に風景画を描いていた。画家として売れる以前の若い頃に、故国アメリカに渡る折に描いた海の景色に引き戻されるかのように、何度も海を描いている。その彼の描く海をテーマにした展覧会「Sargent and the Sea(サージェントと海)」が、今年の夏Royal Academy(ロイヤル・アカデミー)で催されていた。
エキジビションのバナーを建物の前の噴水とともに撮ってみた。
En Route pour la peche 「漁に向かう」 1878年
Atlantic Sunset 「大西洋の日没」 1876年頃
On the Sands 「砂の上で」 1877年
Boat in the Waters off Capri 「カプリの外れの水に浮かぶボート」 1878年
最後の絵の水の透明感と質感が秀逸・・・このスキャンしたイメージでは全然伝わらないが・・・(笑)。
次回は再びTate Britainに戻って、チューダー期の絵画から、相変わらずディティールやら、ジュエリーやらにフォーカスしてみよう。
Labels: アート/デザイン
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