Tudor Re-enactment(チューダー リ・エンアクトメント)-1-
今日からは、中世のその後に続くチューダー期(イギリスの、ほぼ16世紀)の、リ・エンアクトメントのイメージを、2009年夏、グリニッジ海事博物館でのイベント「Henry Days」より。
このイベントではチューダー期クラフトのデモンストレーションがいくつか行われていたので、まず今日はクラフト中心に・・・。
この頃にはまだ「画家(Painter)」という職業はあまり確立していない。やっと王侯貴族の間で肖像画が普及し始めたばかり。「画家」といえばいまだにもっぱら教会の壁画が中心。
それとは別に「Stainer」という職業があって、ステンシルで壁や布帛にペイント(あるいは、染付け)する。タペストリーや刺繍はやはり高価なものなので、安価手軽に、それでも美しく飾りたいという時は「布地にペイント」。階級・地域を問わず、広く普及していたもののよう。
媒体は膠(にかわ)で、ラビット・グルーともよばれ、ウサギの皮から作られる。これとさまざまな顔料を混ぜ合わせて絵の具が作られる。衣服にも刺繍代わりにプリントされるが、耐水性があまりないので、洗濯には耐えない。しかし昔の人は、下着だけ洗濯して、上着やドレスは洗濯しないので大丈夫。(日本の昔の着物を「洗濯」しないのと同じ原理。)
顔料と絵の具を、しげしげ観察・・・日本画用の画材とあまり違いはない。
お隣のテントは「写本師」さん。
主にカリグラフィーを中心に、一部着彩木版画が挿絵として使われている。
絵師さん達の絵の具壷がいいなあ・・・と思って見ていたら、陶芸家のテントを発見。
左上のひものついたボトルは「水筒」。当時はまだコルクは南欧からの輸入品だったのであまり庶民には普及していない。木製の栓にガーゼのような薄い布をかませて押し込む。
右上は「貯金箱」というか・・・小銭入れというか・・・。普段はここにコインをためておいて、いざと言う時に使う。中世やチューダー期のマーケットのあったところを発掘すると、この貯金箱を割って大枚をはたいた、痕跡がいくつも見つかる、とか。首の細くなったところに紐をつけて・・・マーケットへ提げて行く。
左の下は「じょうろ」。水の中に全体を沈めて水を浸し、上の穴に親指で蓋をして水から引き上げる。すると、このじょうろの中には水が入っている。植物の上で親指をあけると、空気が入って、水が下の穴からシャワーのように出る仕組み。
手回しのロクロは、写本に描かれた挿絵や発掘品を参考にして、彼自身が製作したもの。重いオーク材で作られているので、手で回して勢いをつけると慣性で回り続ける、それを利用して器を作る。もちろん足踏み式に比べて、粘土を引き上げている間にも、手を止めて、何度かスピンを加えてやる必要がある。回転をよくするために、ラードなどの油脂をロクロにかませるそうだ。
彼の作品およびコンタクトは、このThe Tudor Marketウェブサイトから、左下のTRINITY COURT POTTERIESのテントをクリックすると見ることができる。ここには、もちろん他にも、いろいろ面白いリプロダクション工芸家が集められているので、ご興味のある方はあちこちのテントをクリックしてみて欲しい。
イギリス製デルフト焼のリプロダクション
こちらは「武具師」さん。
チューダー期の鎧は、スティール板を繋ぎ合わせ、組み合わせて作るため、完全別注、そしてすべてハンドメイド。
(中世の鎧はチェーンでできている部分も多いので、多少サイズに融通が利く。)
お値段の方は、一番基本的なセットで3000ポンド(40万円位)から始まるとか・・・騎士になるのは安くはない話。
次回も、まだまだ続きますよ。
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