Sunday, 22 August 2010

William Morris(ウィリアム・モリス)のRed House(レッドハウス)-2-

昨日に引き続き、William Morris(ウィリアム・モリス)のレッド・ハウス続編。
Cabinet/ Settle in Drawing Room
ドローイング・ルーム(応接室)のセトル(ベンチ)。
梯子段が付いていて上のギャラリー(吹き抜けの中二階部分)に登れる様にデザインされている。これは中世の城のGreat Hall(大広間)に備付けられていた、ミュージシャンや吟遊詩人のためのギャラリーをミニチュア版で真似たもの。実際に彼らがここで余興に音楽を演奏したかは記録にないが、屋根裏への登り口としての「実用」はあった。屋根裏にはりんごが貯蔵されていたとか・・・。
3つに区切られた上段の棚には、もともと3枚のパネルドアが取り付けられていた。それぞれ仲間内の画家Rossetti(ロセッティ)によって、Dante(ダンテ)をテーマにした絵が描かれていて、ロセッティからの、モリスとジェーンへの結婚祝いだった。後年(いつごろか、どのオーナーの時かは不明)これら3枚のパネルは、バラバラにされてそれぞれ贈与または売却されたらしい。
今ではそのパネルがTate Britain美術館他に所蔵されている。これはその一枚。
Rossetti Amor
撮影:colealomartes@Flickr テート・ブリテン美術館所蔵

Part of painting in Drawing Room (by Burne-Jones)
上のセトルの右横に描かれた、同じく仲間内の画家、Burne-Jones(バーン-ジョーンズ)の壁画の部分。
王様がモリスに似ていると思うのは、私だけだろうか(笑)。

Discovered wall painting in Drawing Room
これは同じくセトルの右側で壁画の下、白い板張りの部分。
ナショナル・トラストの所有になってから、配線チェックの必要から張り板をはがしたところ、
ここにも壁画が描かれていたことが判明。

Corner of Drawing Room
ドローイング・ルーム出窓部分。
出窓部分にベンチをしつらえるのも中世の城・屋敷でよく見かけるレイアウト。
ご婦人方は昼の明るい間、ここで刺繍やタペストリーにいそしんだ。

Daisy - embroidery
モリスのベッドルーム、デイジー模様の刺繍壁掛け。刺繍はジェーンと妹のベシーの手による。

Wardrobe
このベッドルームには、バーン-ジョーンズの絵画で装飾された、
このワードローブが納まっていた。
これも後年レッドハウスを離れ、現在はOxfordのアシュモリアン博物館所蔵。

Sussex ChairSussex Chair
Sussex(サセックス)チェアー。
レッドハウスのあるサセックス地方の伝統的な椅子から、デザインが採られている。

Sussex Chair
ディティールと商品展開。
現在のアンティーク市場では高値で売買されるが、
そもそもは一般大衆が購入できる「美しいデザイン」というモットーから、
価格帯は安価に押さえれれていた。

Staircase
階段の吹き抜け。

Through the window
2階の窓から庭を覗く。

Wallpaper patterns by William Morris
モリスの壁紙パターン。
現役、現在でもくりかえし商品化されている。

Printing stamps for wallpaper
展示されているオリジナルの版木。
多色刷りのものはこのような版木を押しては乾かし・・・を何度も繰り返す。
幅約50cmで約10m単位のロールを1本作り上げるだけでも、手間隙かけた工程。

Letter found under the floorboard
ナショナル・トラストによる改装時に床板の下から発見された、
ウェッブからモリスに宛てた手紙のファクシミリ。
内容の後半は業務関連の伝達事項だが、手紙の始めにウェッブがモリスの現状の厄介ごとを聞き及び「あまり悩まないで、元気出してくれ。」と気遣っている。
モリス自身、遠距離通勤のストレスからリューマチ熱を出し、立ち上げた事業の収益がいまひとつ上がらず、妻ジェーンは父親を亡くし落ち込んでいる。敷地に別棟を建てて移り住み、「芸術共同体」の夢に一歩近づく予定だった、仲間のバーンージョーンズ一家にも不幸が重なり、これも断念せざるを得なくなる・・・。モリスにとってかなりの「厄年」。
その翌年にはこの家を出て、市街地チェルシーに家を借りて一家で移り住み、彼自身ここを二度と訪れることはなかったという。
ここレッドハウスは、その後の商業的成功と「近代デザインの父」の名声、そして「芸術村」から発した理想的社会主義の実践を実現したモリスの、若き日の夢と挫折の詰まった家ともいえるだろう。

ウィリアム・モリスに縁のある場所で、ここの他にもいくつか公開されているところがある。参考までにリンクを貼っておこう。

William Morris Gallery  :モリスの生家、London北東Walthamstow。

Kelmscott House :モリスが1878–96年に住んだLondon, Hammer Smith(ハマー・スミス)テムズ川沿いの家。現在も個人宅のため住宅は公開されないが、地下と馬車庫にモリス関連の資料を一部展示する、小さなミュージアムになっている。

No 7 Hammersmith Terrace(Emery Walker House):上記モリスのハマースミスの家の近くで、モリスの友人にして出版事業協力者のエメリー・ウォーカーの家。モリスのインテリアが多数残されている。夏期のみ公開・要予約。(2011年以降の公開は、かなり限られた日程なる予定とのこと)

Kelmscott Manor :モリスが1871年から住んだテムズ川上流、ケルムスコット村の別荘。
モリス在住当時のインテリアがよく保存されている。1896年にモリスはここで亡くなり、同ケルムスコット村の地区教会墓地で、ウェッブのデザインした墓碑の下に眠る。
ロンドンからの公共交通でのアクセスは、なかなか難しい所だが、モリスの生きた「空気」を一番よく体感できる所。



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