Monday, 23 August 2010

William Morris(ウィリアム・モリス)in V&A (ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)

引き続きWilliam Morrisのデザインに関して。
先日訪れたRed Houseには、残念ながら彼や彼の会社「モリス商会」デザインの家具はあまり現存してはいない。
モリス自身引っ越していったわけで、移動できる家具はほとんどすべて持ち出されてしまっている。
後年のオーナー達によってモリスの壁紙が導入されたり、現在所有のナショナル・トラストも、復元プロジェクトに力を注いでいるが、まだ何年もかかる話。
ロンドン周辺で彼のデザインした家具を見るには、V&Aこと、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が一番手っ取り早い。

Cabinet - The Legend of St.George and the Dragon
キャビネット、聖ジョージとドラゴン伝説
Phillip Webb(フィリップ・ウェッブ)デザイン、ウィリアム・モリスによるパネル画、1861-62.V&A所蔵

セント(聖)ジョージはイギリスの守護聖者。中世の騎士たちは「セント・ジョージ!!!」と雄たけびながら、敵軍に突っ込んだとか。現在のフットボール・ファンにそれは踏襲されているのだろう・・・?
ちなみにフランスの守護聖者はサン(聖)ドニなので「モン・ジョア!!サン・ドニ!!!」と叫びながらフランス騎士は突っ込んでくる・・・完全に話がそれた・・・。
そんなわけで、中世以来イギリスにはセント・ジョージ・モチーフがあふれていて、どれもドラゴン退治。爬虫類好きの私には、ちょっとドラゴンが気の毒。

ステンドグラス・バージョンはこれ、

Stained glass panels - The Legend of St. George and the Dragon
ステンドグラス、聖ジョージとドラゴン伝説
デザイン、ロセッティ、モリス・マーシャル・フォークナー商会製作、1862年頃
V&A所蔵


もう一つよく描かれるテーマの一つに「ルネ王」がある。

Cabinet: King Rene's honeymoon
キャビネット、ルネ王のハネムーン
モリス、Madox Brown (マドックス・ブラウン)とRossetti(ロセッティ)によるパネル画、1860-62、V&A所蔵

ルネ王のモチーフは当時の人気歴史作家Walter Scott's (ウォルター・スコット)の小説 「Anne of Geierstein (アン・オブ・ゲイアステイン)」から採られている。ルネ王は南フランスアンジューに15世紀に実在した王で、芸術のパトロンとして知られる。シーンはルネ王と女王Isabel(イザベル)のハネムーンとしながら、人間と芸術(建築・絵画・彫刻・音楽)の愛を、ラファエル前派的理想化で描いているもの。

このテーマはステンドグラス等にも、繰り返し描かれる。

Stained glass - King Rene's honeymoon
ステンドグラス、ルネ王のハネムーン
モリス・マーシャル・フォークナー商会製作、1863年ごろ
V&A所蔵

家具の方では、レッドハウスで展覧したサセックス・チェアーの他に、このような安楽椅子・・・。

Adjustable-back chair, designed by Phillip Webb, 1870-90
アジャスタブル・バック・チェアー(背もたれ調節のできる安楽椅子)
フィリップ・ウェッブ、デザイン、1870-90。V&A所蔵

その他、タペストリー、カーペット、タイル等々、展示は続く。

Tapestry - Angeli Minstrentes
タペストリー、守護天使達
モリス商会 1894、V&A所蔵

Artichoke - embroidered wall hanging
アーティチョーク、刺繍壁掛け。1877-1900、V&A所蔵

The Bullerswood carpet
ブラースウッド・カーペット、モリス商会1889。 V&A所蔵

Tile Panel - designed by William Morris, made at the William De Morgan pottery, 1876
タイル・パネル
モリス、デザイン、William De Morgan(ウィリアム・ド・モーガン)製作、1876. V&A所蔵

Ariadne and Phyllis from Chaucer's "The Legend of Good Women" - designed by Burne-Jones and William Morris, 1870
アリアドネとフィリス、チョーサーの「善女伝説」より、1870。
V&A所蔵

以上、V&AのBritish Galleries(ブリティッシュ・ギャラリース)の、Level4(4階)の19世紀末Room「125」に大半が集められている。しかし、モリスネタなら、もう一箇所覗いてみる値打ちのある部屋がある。それはMorris Room(モリス・ルーム)と現在は呼ばれているが、V&A開館当時は、その装飾の色合いからGreen Room(緑の部屋)と呼ばれたカフェ。

Morris Room Cafe
モリス・ルーム・カフェ。V&A

Panel by Edward Burne-Jones - collage - Morris Room
モリス・ルーム・カフェ内の壁パネル、バーン-ジョーンズ画。V&A

Stained glass detail - collage - Morris Room
モリス・ルーム・カフェ内、ステンドグラス部分。V&A

こんな愉快なものを描くのはフィリップ・ウェッブ・・・と見た。

ごゆっくりお茶でもどうぞ(笑)。

ところで、この秋に京都、東京、名古屋で「英国、ヨーロッパ、日本のアーツ・アンド・クラフツ展」が巡回すると聞いた。そのため、V&Aから巡業に出ている収蔵品もある。日本におられる方で、チャンスがあればぜひご覧ください。

明日から、カーディフに写真旅行に出るので、更新はしばらくお休み。金曜日に帰ってきたら、モリスのタイル、陶器部門を支えた、William De Morgan(ウィリアム・ド・モーガン)の作品を展覧予定。

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