Pre-Raphaelite(ラファエル前派)の絵画
今回のCardiff(カーディフ)旅行で、初日の半ば時間つぶしに訪れたCardiff National Museum(カーディフ国立博物館)で、意外な出会い。先日から引き続き展覧していた「モリス一家」とも縁の深い、19世紀末ラファエル前派の絵画を、いくつか見つけた。
以前他の博物館で撮ってきたものと合わせて、展覧してみよう。
*Wikiでは「ラファエル前派」の括りの中に,そこから影響を受けたウォーターハウス、イーヴリン・モーガン等を含めない狭義の解釈をとっているが、ここでは便宜上「同時代の影響下の画家達」という、通称的なゆるい括りをとることにする。
The Mill - Edward Burne-Jones V&A所蔵。
Pygmalion and the Image - Edward Burne-Jones バーミンガム博物館所蔵
個人的には、私のお気に入りはバーン・ジョーンズ。
優美なクールともいえる人物描写と深い色合いが、同時代の画家の中でも際立っている。
pollo and Marsyas - John Melhuish Strudwick カーディフ国立博物館所蔵
これは今回初めて見た絵画。バーン・ジョーンズそっくりだが、別人。
バーン・ジョーンズの教え子だそうな。
そういわれれば、師匠に比べて表情や体の線が少し硬い。
The Seeds and Fruits of English Poetry - Ford Madox Brown アシュモリアン博物館所蔵
イギリス中世の詩人チョーサーは、中世を理想化したラファエル前派や「モリス一家」にとってはミューズでありヒーロー。
初めて英語で詩を書いたチョーサーに始まり(それ以前は支配者階級の言語フランス語で書かれていた)、
その後のイギリス詩人達にいたる、イギリス文学礼賛の絵画。
King Rene's Honeymoon - Architecture, Ford Madox Brown カーディフ国立博物館所蔵
この絵は・・・もう、おなじみ。
ウイリアム・モリス達によって、家具の扉絵やステンドグラスとして何度も繰り返し使われている。
Jephthah - John Everett Millais カーディフ国立博物館所蔵
ラファエル前派のオリジナル中核メンバーのミレー画。
戦勝将軍のヤフザが、国に帰還して最初に出会ったものを神への生贄に捧げると誓う。
ところが、最初に出会ってしまったのは愛娘だったという・・・古代伝説にありがちな悲劇。
このように、ラファエル前派の絵画には必ずといっていいほど、ストーリー性とドラマが盛り込まれている。
これも過剰になると、感傷癖に陥ってしまうのだが・・・。
Convent Thoughts - Charles Alston Collins アシュモリアン博物館所蔵
Beata Beatrix - Dante Gabriel Rossetti バーミンガム博物館所蔵
イタリア・ルネッサンスの詩人ダンテの夭逝した思い人、ビアタ・ビアトリクス。
ダンテがチョーサーと並ぶ中世ルネッサンス文化人の理想の代表なら、
彼女はその理想化されたマドンナ。
May Morning on Magdalen Tower(部分)- William Holman Hunt バーミンガム博物館所蔵
ハントらしい鮮やかな色合いと、くっきりした・・・というか、くっきりし過ぎの人物描写。
Fair Rosamund - Dante Gabriel Rossetti カーディフ国立博物館所蔵
「麗しのロザムンド」ヘンリー2世の愛人で、伝承上では嫉妬した王妃アリエノール・ド・アキテーヌに毒殺される。
しかし、実際の史実上では、尼僧院に引きこもり26歳で亡くなっていて・・・毒殺ではなかった。
Fair Rosamund - John William Waterhouse カーディフ国立博物館所蔵
これはもう1人の私の「お気に入り」ウォーターハウスの描くロザムンド。
カーテンの陰から覗いているのが、王妃アリエノール・ド・アキテーヌとか・・・。
Perseus and the Graiae - Edward Burn-Jones カーディフ国立博物館所蔵
この絵はバーン・ジョーンズなのだが・・・どの本でも見たことがない。
Flickrのバーン・ジョーンズ好きの人の間でも「始めて見た」と驚かれた作品。
木目を生かした木地に、ジエッソの浅いレリーフ、そこに金銀箔仕上げ。
構図の緊張感、収斂感、素材の対比、彫りの線のデリケートな流麗さ・・・
バーンジョーンズの作品の中でも、秀麗かつ特異な存在。
しかし初めて公開された当時は、不評を買って、バーンジョーンズはシリーズ化を断念したそうだ。
つまり、これが唯一残されたこの様式の作品・・・もったいない。
Perseus and the Graiae (部分) - Edward Burn-Jones カーディフ国立博物館所蔵
あまりに美しかったので・・・クローズアップで。
ラファエル前派及び、近代以前の絵画はある意味「工芸品」であり「装飾品」。つまり空間を飾るための「美」ということに最大限の意味合いがある。空間を飾ることしなくなった時代に、美は不必要になり、美が失われた穴をコンセプトで埋め合わせたものが現代アートだと・・・個人的に解釈している(笑)。
明日からは、その「美」や「装飾性」を極端なまでに追及した(一言で言えば・・・装飾過剰の!!)William Burgesデザイン設計のカーディフ城のイメージを展覧しよう。
Labels: アート/デザイン
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