Emma Bridgewater Factory(エマ・ブリッジウォーター・ファクトリー)
今回から、昨年の10月に訪れた、イギリスの陶磁器の町Stoke-on-Trent(ストーク・オン・トレント)のイメージを。
ストークは2014年(<このページ>から、3回のエントリー)、2015年(<このページ>から、2回)と、例年日帰りやら、一泊だけのミニ旅行で訪れている。
それというのも、21世紀の初頭には、完全に衰退して「死んでしまった」イギリスの歴史的窯陶業の町ストーク・オン・トレントが、アメリカ資本の流入や、文化遺産保護をライフワークにしている、チャールズ皇太子の援助などで、復興中、いわば「ルネッサンス」期を迎えつつある。その状況を実際に見てみたい、というので、陶器にも詳しい日本のアンティーク・ディーラーの友人が、イギリスに滞在するたびに、ミニ旅行に誘ってくれるから。
今回も、一段と規模の大きくなったWorld od Wedgwood (ウエッジウッド・センター)、Burleigh Pottery (バーレイ・ポタリー)など、定番を見て回る以外にも、一泊して2ヶ所新しい所にも見学に訪れた。
今回は、そのうちの一つ、Emma Bridgewater Factory(エマ・ブリッジウォーター・ファクトリー)のイメージを。
このブランド、ロンドンに2件ショップがあって、カラフルなイギリス・カントリーテイストで、イギリスはもとより世界各地に根強いファン層を持っている。近頃の60'sテイストもうまく取り入れて、相変わらずの人気ブランド。
1985年にエマ・ブリッジウォーターが設立したこのブランドは、ストークでは「ニュー・ウェーヴ」。いままで見てきた窯元と、スポンジ絵付けという、テクニークの違いもあって、新鮮な面白みのある見学だった。
まずは、ファクトリーの外観。
工場自体は19世紀に遡る、窯元の一つを買い取って、
現在はこの直営工場で生産されている。
正面は、正規品のショップ。
その前が中庭になっていて、気候のいい頃だと、
カフェテラスでお茶というのも和めそう。
ここはただの「工場」ではなくて、
ひとつの「ブランド」なので、
フレンドリーでカジュアルなデザインコンセプトが、
ショップや、カフェにも行き渡っていて、
なかなかオシャレ。
カフェの隣はアウトレット・ショップ。
ここでは軽度のB品が、ディスカウントで販売されている。
素人目にはほとんどわからないものが多い。
なので、赤マーカーで、問題の箇所がティックされている。
それを見て、自分にとって問題なし、
かどうかを、判断できる。
申し込んでおいた工場見学ツアーは、
指定の時間に、ここの集合なので、
時間待ちの間、色々と見て回ることができる。
工場見学ツアーはまず、
モールド(型)を作るための型を作る、
というところから始まる。
モールドは石膏製で、奥に2機あるのが、
石膏の撹拌機。
モールドを作る型は、シリコン(だったと思う・・・)製。
赤茶色の箱型のものがそれ。
石膏型からマグが型どられて出てくる様子と、
その石膏型を作るための、シリコン型
(ここでは、ブルーのもの)の説明。
そのシリコン型の棚。
こちらは、石膏型の方の棚。
この機械は、粘土を混ぜて流し込み用の
液状にするためのもの。
1号機~3号機まであったと思う。
それぞれ、エマ・ブリッジウォーターの代表的な、
ドットパターンで飾られていて、機械まで愛らしい。
この液状粘土が、まるでタコ焼きでも作るかのように、
並べられた石膏型に、続々と注ぎ込まれていく。
右上では、熟練の職人さんが、
指で粘土の固まり具合をチェックしている。
石膏型が液状粘土の水分を吸収するので、
石膏型に接した部分から、粘土が固まっていく。
一定の厚みに達したところで、
まだ固まっていない中の液状粘土を、
注ぎだして、マグの形が作られる。
これをまた、半乾きに。
そこで、トップの部分の余分の粘土を取り除く。
(写真下の段の工程)
もう少し乾かせて、中の粘土が安定したところで、
石膏型から取り出す。
そしてまた、乾燥。
この段階では、まだ「バリ」がでているので、
次にこれをスムースにしていく。
水を使って、スポンジやナイフで削っていっている。
「モールド部」の生産ライン。
こちらは、ロクロをつかって成形する、
皿やボウルの部門。
ここでは、液状ではなくて、通常の粘土が使われる。
一定量が切り取られて、手前の黄色い台の方のロクロで、
粘土を平たいクレープ(というか、薄いお好み焼き)状にする。
それを奥の方の、皿の石膏内型の上に乗せて回転させ、
上からメタルのゲージが降りてきて、
外側の形を作り出す。
石膏内型に載せたまま、乾燥させる。
大型のボウルの微妙なカーヴは、
半乾きの状態からロクロにかけ、
ゲージと手作業の両方で。
この後、乾燥後、すべて素焼きの窯に入って、
ビスク生地になる。
ここからは「絵付け部」。
スタッフの年齢層がぐっと下がって、
若くてセンスの良さそうな、
アートスクール出身っぽいお嬢さん達で占められている。
左上はここで使うカラーの、顔料釉薬。
次にエマのデザインに準じて、スポンジ型を作る工程。
細かいヒートペンでスポンジを溶かして、
パターンを浮き上がらせる。
この過程で有毒ガスが出るので、
手元にバキューム機が設置されている。
そのスポンジを使って、指定のデザイン通りに絵付けされる。
右下では、絵付けの状態の検品。
欠けた部分を足したり、はみ出した部分を削ったりしている。
絵付けの終わったところ。
この後まだ「絵付け部」の見学は続くけれど、
次シーズンの製作部では撮影禁止なので、
写真はここまで。
これは「下絵付け」なので、
その上からクリアの釉薬を全体にかけて、
最終焼成されて、完成品となる。
この後、最初の写真の右に見える建物の、
「絵付けスタジオ」で、
エマ・ブリッジウォーターの素焼き型の上に
ヴィジターも好きなように絵付けができる・・・
というのに、当然のように吸い込まれていくのだった。
あまり見かけないハーフパイント・マグがあったので、
これに絵付けをすることにした。
次の予定があって、半日も描いていられないので、
スポンジ絵付けで、そそくさと済ますことに。
微かに期待してたんだけれど、
さすがにスポンジ型は
エマ・ブリッジウォーターのものではなくて
(それだと「モドキ」が簡単にできてしまう・・・)、
使われていないものばかり。
基本子供向けなので、
子供っぽいスポンジ型が多くて、
どんなのにするか迷ったけれど、
無難に花柄で。
マグ代とスタジオ代と送料を払って、
預けて帰ると、10日ぐらいで完成して送られてきた。
出来上がり~。
毎日たっぷりのお茶で愛用中。
いろいろ楽しめる、充実の工場見学だった。
Emma Bridgewater Factory
(エマ・ブリッジウォーター・ファクトリー)
オープニング情報は、英文で<このページ>
ファクトリー・ツアーは平日のみ。
ファクトリー・ツアー案内は英文で<このページ>。
地図:
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