Sunday 12 February 2017

Emma Bridgewater Factory(エマ・ブリッジウォーター・ファクトリー)

今回から、昨年の10月に訪れた、イギリスの陶磁器の町Stoke-on-Trent(ストーク・オン・トレント)のイメージを。
ストークは2014年(<このページ>から、3回のエントリー)、2015年(<このページ>から、2回)と、例年日帰りやら、一泊だけのミニ旅行で訪れている。
それというのも、21世紀の初頭には、完全に衰退して「死んでしまった」イギリスの歴史的窯陶業の町ストーク・オン・トレントが、アメリカ資本の流入や、文化遺産保護をライフワークにしている、チャールズ皇太子の援助などで、復興中、いわば「ルネッサンス」期を迎えつつある。その状況を実際に見てみたい、というので、陶器にも詳しい日本のアンティーク・ディーラーの友人が、イギリスに滞在するたびに、ミニ旅行に誘ってくれるから。
今回も、一段と規模の大きくなったWorld od Wedgwood (ウエッジウッド・センター)、Burleigh Pottery (バーレイ・ポタリー)など、定番を見て回る以外にも、一泊して2ヶ所新しい所にも見学に訪れた。
今回は、そのうちの一つ、Emma Bridgewater Factory(エマ・ブリッジウォーター・ファクトリー)のイメージを。
このブランド、ロンドンに2件ショップがあって、カラフルなイギリス・カントリーテイストで、イギリスはもとより世界各地に根強いファン層を持っている。近頃の60'sテイストもうまく取り入れて、相変わらずの人気ブランド。
1985年にエマ・ブリッジウォーターが設立したこのブランドは、ストークでは「ニュー・ウェーヴ」。いままで見てきた窯元と、スポンジ絵付けという、テクニークの違いもあって、新鮮な面白みのある見学だった。

Emma Bridgewater Factory
まずは、ファクトリーの外観。
工場自体は19世紀に遡る、窯元の一つを買い取って、
現在はこの直営工場で生産されている。
正面は、正規品のショップ。

Emma Bridgewater Factory
その前が中庭になっていて、気候のいい頃だと、
カフェテラスでお茶というのも和めそう。
ここはただの「工場」ではなくて、
ひとつの「ブランド」なので、
フレンドリーでカジュアルなデザインコンセプトが、
ショップや、カフェにも行き渡っていて、
なかなかオシャレ。

Factory Shop
カフェの隣はアウトレット・ショップ。
ここでは軽度のB品が、ディスカウントで販売されている。
素人目にはほとんどわからないものが多い。
なので、赤マーカーで、問題の箇所がティックされている。
それを見て、自分にとって問題なし、
かどうかを、判断できる。

申し込んでおいた工場見学ツアーは、
指定の時間に、ここの集合なので、
時間待ちの間、色々と見て回ることができる。

Emma Bridgewater Factory Tour
工場見学ツアーはまず、
モールド(型)を作るための型を作る、
というところから始まる。
モールドは石膏製で、奥に2機あるのが、
石膏の撹拌機。
モールドを作る型は、シリコン(だったと思う・・・)製。
赤茶色の箱型のものがそれ。

Emma Bridgewater Factory Tour
石膏型からマグが型どられて出てくる様子と、
その石膏型を作るための、シリコン型
(ここでは、ブルーのもの)の説明。

Emma Bridgewater Factory Tour
そのシリコン型の棚。

Emma Bridgewater Factory Tour
こちらは、石膏型の方の棚。

Emma Bridgewater Factory Tour
この機械は、粘土を混ぜて流し込み用の
液状にするためのもの。
1号機~3号機まであったと思う。
それぞれ、エマ・ブリッジウォーターの代表的な、
ドットパターンで飾られていて、機械まで愛らしい。

Emma Bridgewater Factory Tour
この液状粘土が、まるでタコ焼きでも作るかのように、
並べられた石膏型に、続々と注ぎ込まれていく。
右上では、熟練の職人さんが、
指で粘土の固まり具合をチェックしている。
石膏型が液状粘土の水分を吸収するので、
石膏型に接した部分から、粘土が固まっていく。
一定の厚みに達したところで、
まだ固まっていない中の液状粘土を、
注ぎだして、マグの形が作られる。
これをまた、半乾きに。
そこで、トップの部分の余分の粘土を取り除く。
(写真下の段の工程)

Emma Bridgewater Factory Tour
もう少し乾かせて、中の粘土が安定したところで、
石膏型から取り出す。

Emma Bridgewater Factory Tour
そしてまた、乾燥。

Emma Bridgewater Factory Tour
この段階では、まだ「バリ」がでているので、
次にこれをスムースにしていく。

Emma Bridgewater Factory Tour
水を使って、スポンジやナイフで削っていっている。

Emma Bridgewater Factory Tour
「モールド部」の生産ライン。

Emma Bridgewater Factory Tour
こちらは、ロクロをつかって成形する、
皿やボウルの部門。
ここでは、液状ではなくて、通常の粘土が使われる。
一定量が切り取られて、手前の黄色い台の方のロクロで、
粘土を平たいクレープ(というか、薄いお好み焼き)状にする。
それを奥の方の、皿の石膏内型の上に乗せて回転させ、
上からメタルのゲージが降りてきて、
外側の形を作り出す。

Emma Bridgewater Factory Tour
石膏内型に載せたまま、乾燥させる。

Emma Bridgewater Factory Tour
大型のボウルの微妙なカーヴは、
半乾きの状態からロクロにかけ、
ゲージと手作業の両方で。

この後、乾燥後、すべて素焼きの窯に入って、
ビスク生地になる。

Emma Bridgewater Factory Tour
ここからは「絵付け部」。
スタッフの年齢層がぐっと下がって、
若くてセンスの良さそうな、
アートスクール出身っぽいお嬢さん達で占められている。
左上はここで使うカラーの、顔料釉薬。
次にエマのデザインに準じて、スポンジ型を作る工程。
細かいヒートペンでスポンジを溶かして、
パターンを浮き上がらせる。
この過程で有毒ガスが出るので、
手元にバキューム機が設置されている。
そのスポンジを使って、指定のデザイン通りに絵付けされる。
右下では、絵付けの状態の検品。
欠けた部分を足したり、はみ出した部分を削ったりしている。

Emma Bridgewater Factory Tour
絵付けの終わったところ。
この後まだ「絵付け部」の見学は続くけれど、
次シーズンの製作部では撮影禁止なので、
写真はここまで。

Emma Bridgewater Factory Tour
これは「下絵付け」なので、
その上からクリアの釉薬を全体にかけて、
最終焼成されて、完成品となる。

この後、最初の写真の右に見える建物の、
「絵付けスタジオ」で、
エマ・ブリッジウォーターの素焼き型の上に
ヴィジターも好きなように絵付けができる・・・
というのに、当然のように吸い込まれていくのだった。

Decorating Studio
あまり見かけないハーフパイント・マグがあったので、
これに絵付けをすることにした。
次の予定があって、半日も描いていられないので、
スポンジ絵付けで、そそくさと済ますことに。

微かに期待してたんだけれど、
さすがにスポンジ型は
エマ・ブリッジウォーターのものではなくて
(それだと「モドキ」が簡単にできてしまう・・・)、
使われていないものばかり。

Decorating Studio
基本子供向けなので、
子供っぽいスポンジ型が多くて、
どんなのにするか迷ったけれど、
無難に花柄で。

マグ代とスタジオ代と送料を払って、
預けて帰ると、10日ぐらいで完成して送られてきた。

Fired Mug
出来上がり~。
毎日たっぷりのお茶で愛用中。

いろいろ楽しめる、充実の工場見学だった。




Emma Bridgewater Factory
(エマ・ブリッジウォーター・ファクトリー)


オープニング情報は、英文で<このページ
ファクトリー・ツアーは平日のみ。
ファクトリー・ツアー案内は英文で<このページ>。

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