Saturday 5 July 2014

San Marco(サン・マルコ)教会・博物館-フィレンチェ-と、フレスコに関して。


週末で郵便の配達がないと、ちょっと仕事の手が空いたりする。
パーツやビーズなどなどの材料は、今どきのこととて、たいていNetで仕入れをしている。その郵便デリバリーがない・・・ということは、つかの間の「万事休す」状態が訪れる事がある。今ちょうどそれで、月曜まで暫し、たらたらの日々。
なので、標本箱の更新をば。

今回の標本箱は、フィレンチェのSan Marco(サン・マルコ)教会。
イタリアの教会は往々にして、その隣に修道院が併設されている。ここの場合もそうで、そして、博物館として公開されているメインの「見どころ」は、教会自体よりも、このドメニコ会修道院の個々の部屋に描かれた、Fra Angelicoフラ・アンジェリコ)のフレスコ壁画の方。
配偶者氏の「フィレンチェで最も行きたい場所」No1、ここのフラ・アンジェリコの「受胎告知」が、幼少のみぎりから大好きな絵画作品の一つ・・・だそうなので、これは外すわけにはいかんでしょう。
そこで、公式オープニング時間の8:15am・・・は、無理にしても、9:00amには入口前までやってきた。
ところが、だ、「10時にオープンします。」の張り紙が貼ってあって、閉まっている。 ゆるい、実にゆるいイタリア式開館時間。 そこでやむなく、隣のサン・マルコ教会を、先に見て回った。


San Marco, Florence
教会の薄暗い一角にある「受胎告知」の壁画は、
フラ・アンジェリコよりは、少し後年のもの・・・だと思う。

San Marco, Florence
入口に近い部分に、15世紀的な壁画が残っている、

San Marco, Florence
というか、16-17世紀に上塗りされたものが、
近年復旧されている、という様子。

San Marco, Florence
全体的なインテリアと外観は、16~17世紀に改装されたもので、
バロック~ネオ・クラシカルな様式。
この頃にルネッサンス期の壁画は「時代遅れ」とされて、
シンプルなグレー・トーンに塗り込められてしまったケースが多々あるので。

San Marco, Florence
その、17世紀バロックな、祭壇部天井画。

San Marco, Florence
バロック期にビザンティン様式に描かれた奉納画。

San Marco, Florence
左側にあるSalviati Chapel(サルヴァティ・チャペル)の天井画。
16世紀後半のもの。

San Marco, Florence
チャペル手前の部分の天井装飾。

San Marco, Florence
Santos(サントス)のフィギアとEx-voto(エクス・ヴォト).

San Marco, Florence
告解室に陽光。

などなど、写真にとっていたら、すでに10時前。

San Marco, Florence
そこで、教会を出て、隣の博物館入口へと向かう。
これは教会入口の上の、福音記者聖マルコの象徴のライオン。

博物館入口前で、団体ツアーにまみれて、開館を待って・・・、

Convent of San Marco
ようやく、Convent(修道院)のCloister(回廊)部にたどり着く。
こんなにすいてるはずもなく、何人もポストプロセス抹消(笑)。

Convent of San Marco
クロイスター部の壁画は、16世紀風な感じ。

Convent of San Marco
これが、フラ・アンジェリコのThe Crucifixion(1441-42)、
ブルーとピンクの筆のタッチの残る空が、
静謐な表現の中に、ドラマティックな効果を与えている。
右で礼拝するのは、各修道会の創設者達。
そのなかで、ドメニコ会創設者の聖ドメニコが、
一番前にしゃしゃりでているのは、
ここがドメニコ会修道院だから(笑)。
・・・などと思ったら、「撮影禁止です」と警告が出た。失礼。

そんなわけで、残念ながら、自分では撮影できなかったけれど、
その、フラ・アンジェリコの「受胎告知」は、これ。

ANGELICO, Fra Annunciation, 1437-46 (2236990916).jpg
"ANGELICO, Fra Annunciation, 1437-46 (2236990916)" by carulmare - ANGELICO, Fra Annunciation, 1437-46
Uploaded by JoJan. Licensed under CC BY 2.0 via Wikimedia Commons.

クロイスターから、上階に登る階段を上がったら、
目の前に、とても保存状態のいい鮮やかなこの絵が、
ほぼ目の高さに現れる。
それはそれは、とても印象的。
普通このシーンに添えて、ユリの花などの小物が描かれるのだけれど、
そういった「小物」を一切省いたシンプルな表現。
修道僧の日常の祈りの中に、説明も装飾もなにも必要ではない・・・、
というメッセージのよう。

その他のフラ・アンジェリコのフレスコ画や修道院室の様子は、
以下のヴィデオ(英語)で見ることができる。





mocking-christ
個人的に一番印象に残ったのは、
この「The mocking of Christ(キリストの嘲笑)」
キリストが十字架刑になる前に、
様々な侮辱を受けるシーンが描かれるのだけれど、
このフラ・アンジェリコの表現は、あまりにも象徴的で、
ほとんどシュールな印象さえ受ける。
背景のミントグリーンの鮮やかさも目を引く。


さて、話の後半。
フレスコ画づくしのフィレンチェを見て回って、「ところで、フレスコ画って何?」という至極基礎的な疑問が出てきた。
ウチの芸大では、フレスコはやってなかったので、フレスコという名称しか知らなかった。
この博物館のショップで買った、「The Fresco」というブックレットを、しげしげ読んでみて初めて目からウロコ、フレスコ=フレッシュ、つまり塗りたての(乾いていない)プラスター(=漆喰)の上に描くので、フレスコと呼ばれるのだ・・・と知った。

sinopia
Image sorce : The Fresco
まず壁の上に下絵(Sinopia=シノピア)が描かれる。

plaster
Image sorce : The Fresco
画面の上の方から順に、一度に(プラスターが乾かないうちに)、
描ききれるだけの区画に、プラスターを入れる。

divide
Image sorce : The Fresco
フラ・アンジェリコの「受胎告知」の場合、
このように分割して描かれていたと考えられている。

顔など、時間のかかる部分は、同じ一日でも小さいサイズでしか描けないが、壁など単純な部分は、一日に大きな面積を描くことができる。
そして、こうして乾いていないプラスターの上に描くことで、顔料とプラスターが一体化して、色のついた「壁」となるので顔料が退化せず、なので、壁画が何百年でも、プラスターとともに生き残ることになるのだそう。
未経験なウィリアム・モリス達がOxford  Unionの壁画を描いたが、数年で退色が始まってしまった・・・という話<標本箱は、このページ>の、意味が初めて分かった。


ミケランジェロのフレスコ画制作を再現してみた・・・
というヴィデオを、参考までに。



San Marco(サン・マルコ)教会・博物館
Piazza San Marco 1 - Firenze

開館時間: 英文で<このページ
入場料: 4ユーロ

地図:

View Larger Map

















Labels: