San Marco(サン・マルコ)教会・博物館-フィレンチェ-と、フレスコに関して。
週末で郵便の配達がないと、ちょっと仕事の手が空いたりする。
パーツやビーズなどなどの材料は、今どきのこととて、たいていNetで仕入れをしている。その郵便デリバリーがない・・・ということは、つかの間の「万事休す」状態が訪れる事がある。今ちょうどそれで、月曜まで暫し、たらたらの日々。
なので、標本箱の更新をば。
今回の標本箱は、フィレンチェのSan Marco(サン・マルコ)教会。
イタリアの教会は往々にして、その隣に修道院が併設されている。ここの場合もそうで、そして、博物館として公開されているメインの「見どころ」は、教会自体よりも、このドメニコ会修道院の個々の部屋に描かれた、Fra Angelico(フラ・アンジェリコ)のフレスコ壁画の方。
配偶者氏の「フィレンチェで最も行きたい場所」No1、ここのフラ・アンジェリコの「受胎告知」が、幼少のみぎりから大好きな絵画作品の一つ・・・だそうなので、これは外すわけにはいかんでしょう。
そこで、公式オープニング時間の8:15am・・・は、無理にしても、9:00amには入口前までやってきた。
ところが、だ、「10時にオープンします。」の張り紙が貼ってあって、閉まっている。 ゆるい、実にゆるいイタリア式開館時間。 そこでやむなく、隣のサン・マルコ教会を、先に見て回った。
教会の薄暗い一角にある「受胎告知」の壁画は、
フラ・アンジェリコよりは、少し後年のもの・・・だと思う。
入口に近い部分に、15世紀的な壁画が残っている、
というか、16-17世紀に上塗りされたものが、
近年復旧されている、という様子。
全体的なインテリアと外観は、16~17世紀に改装されたもので、
バロック~ネオ・クラシカルな様式。
この頃にルネッサンス期の壁画は「時代遅れ」とされて、
シンプルなグレー・トーンに塗り込められてしまったケースが多々あるので。
その、17世紀バロックな、祭壇部天井画。
バロック期にビザンティン様式に描かれた奉納画。
左側にあるSalviati Chapel(サルヴァティ・チャペル)の天井画。
16世紀後半のもの。
チャペル手前の部分の天井装飾。
Santos(サントス)のフィギアとEx-voto(エクス・ヴォト).
告解室に陽光。
などなど、写真にとっていたら、すでに10時前。
そこで、教会を出て、隣の博物館入口へと向かう。
これは教会入口の上の、福音記者聖マルコの象徴のライオン。
博物館入口前で、団体ツアーにまみれて、開館を待って・・・、
ようやく、Convent(修道院)のCloister(回廊)部にたどり着く。
こんなにすいてるはずもなく、何人もポストプロセス抹消(笑)。
クロイスター部の壁画は、16世紀風な感じ。
これが、フラ・アンジェリコのThe Crucifixion(1441-42)、
ブルーとピンクの筆のタッチの残る空が、
静謐な表現の中に、ドラマティックな効果を与えている。
右で礼拝するのは、各修道会の創設者達。
そのなかで、ドメニコ会創設者の聖ドメニコが、
一番前にしゃしゃりでているのは、
ここがドメニコ会修道院だから(笑)。
・・・などと思ったら、「撮影禁止です」と警告が出た。失礼。
そんなわけで、残念ながら、自分では撮影できなかったけれど、
その、フラ・アンジェリコの「受胎告知」は、これ。
"ANGELICO, Fra Annunciation, 1437-46 (2236990916)" by carulmare - ANGELICO, Fra Annunciation, 1437-46
Uploaded by JoJan. Licensed under CC BY 2.0 via Wikimedia Commons.
クロイスターから、上階に登る階段を上がったら、
目の前に、とても保存状態のいい鮮やかなこの絵が、
ほぼ目の高さに現れる。
それはそれは、とても印象的。
普通このシーンに添えて、ユリの花などの小物が描かれるのだけれど、
そういった「小物」を一切省いたシンプルな表現。
修道僧の日常の祈りの中に、説明も装飾もなにも必要ではない・・・、
というメッセージのよう。
その他のフラ・アンジェリコのフレスコ画や修道院室の様子は、
以下のヴィデオ(英語)で見ることができる。
個人的に一番印象に残ったのは、
この「The mocking of Christ(キリストの嘲笑)」
キリストが十字架刑になる前に、
様々な侮辱を受けるシーンが描かれるのだけれど、
このフラ・アンジェリコの表現は、あまりにも象徴的で、
ほとんどシュールな印象さえ受ける。
背景のミントグリーンの鮮やかさも目を引く。
さて、話の後半。
フレスコ画づくしのフィレンチェを見て回って、「ところで、フレスコ画って何?」という至極基礎的な疑問が出てきた。
ウチの芸大では、フレスコはやってなかったので、フレスコという名称しか知らなかった。
この博物館のショップで買った、「The Fresco」というブックレットを、しげしげ読んでみて初めて目からウロコ、フレスコ=フレッシュ、つまり塗りたての(乾いていない)プラスター(=漆喰)の上に描くので、フレスコと呼ばれるのだ・・・と知った。
Image sorce : The Fresco
まず壁の上に下絵(Sinopia=シノピア)が描かれる。
Image sorce : The Fresco
画面の上の方から順に、一度に(プラスターが乾かないうちに)、
描ききれるだけの区画に、プラスターを入れる。
Image sorce : The Fresco
フラ・アンジェリコの「受胎告知」の場合、
このように分割して描かれていたと考えられている。
顔など、時間のかかる部分は、同じ一日でも小さいサイズでしか描けないが、壁など単純な部分は、一日に大きな面積を描くことができる。
そして、こうして乾いていないプラスターの上に描くことで、顔料とプラスターが一体化して、色のついた「壁」となるので顔料が退化せず、なので、壁画が何百年でも、プラスターとともに生き残ることになるのだそう。
未経験なウィリアム・モリス達がOxford Unionの壁画を描いたが、数年で退色が始まってしまった・・・という話<標本箱は、このページ>の、意味が初めて分かった。
ミケランジェロのフレスコ画制作を再現してみた・・・
というヴィデオを、参考までに。
San Marco(サン・マルコ)教会・博物館
Piazza San Marco 1 - Firenze
開館時間: 英文で<このページ>
入場料: 4ユーロ
地図:
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