Wednesday, 25 June 2014

Santa Maria del Carmine (サンタ・マリア・デル・カルミネ教会)


フィレンチェ話、今回もまた、ややマイナー目の教会のイメージを。

サン・スピリト日曜マーケット<このページ>やら、サン・スピリト博物館<このページ>の後、ウチの一行は、毎度のことながら、滞在していたオルネ川南岸・オルトラルノ地区をうろついていた。
マーケットも見たし、雨宿りでミュージアムも見たし、ランチも食べた。 さて、次はどこへ行こうかというので、ホリデー・フラットのオーナーが教えてくれた、「フレスコ画で有名なチャペル」のある近所の教会に行ってみよう、ということになった。
その教会が、Santa Maria del Carmine (サンタ・マリア・デル・カルミネ教会)。

Santa maria del carmine side.JPG
"Santa maria del carmine side". Licensed under CC BY 2.5 via Wikimedia Commons.
相変わらず、外観を撮り忘れるので、またWikiからの借り物写真。
たどり着いたのはこの教会で、外観のファサードは、
18世紀の火災後の改修以来、未完成のまま残されているのだとか。
なので、いまひとつぱっとしない。

Santa Maria del Carmine, Florence
適当にやって来たにしては都合よく開いていたので、入ってみる。
中はこんな感じで、ロココ調。

Santa Maria del Carmine, Florence
え?このロココな天井画のこと?
フィレンチェでロココ見るのもなぁ・・・。
などと、なにが見どころなのか、未だによく分かっていない。

Santa Maria del Carmine, Florence
Alter(祭壇)もバロックだし・・・。
で、なにげに横のチャペルを覗いてみると、

Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
おぉ、これはこれは、かなり古げな・・・ルネッサンス。

Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
で、柱部分を見ると・・・マサッチョの「楽園追放」ですがな。

ここで初めて、教会に立ててある英文解説をしげしげと読む。
このチャペルは、1386年に富裕商人Piero Brancacci.(ピエトロ・ブランカッチ)の発注で建造されたチャペルなので、Brancacci Chapel(ブランカッチ・チャペル)と呼ばれている。
チャペルを引き継いだ、甥のFelice Brancacci(フェリス・ブランカッチ)が1424年頃に、四面構成のフレスコ壁画「聖ペトロ伝」を寄進した。
そもそもは、Masolino(マソリーノ)が発注を受けてとりかかり、マソリーノの弟子(推定)、Masaccio(マサッチョ)がアシストしていたと考えられているが、途中2年ほどマソリーノがハンガリー王の要請で、ハンガリーに「出張」している間に、大多数の部分がマサッチョによって描かれていた。
マサッチョはパースペクティヴを最初に使いこなしたルネッサンス画家と考えれれているが、マソリーノがブランカッチ・チャペルの制作に戻ってきた時にも、以前の弟子のマサッチョから学ぶところが大きかったと言われている。
その後、マサッチョはローマに呼ばれ、チャペルの完成を見ずにローマで26(27とも)歳の短い生涯を終えることになる。
一方、マソリーノも1440年頃に亡くなったため、この一連の壁画は1480年代にFilippino Lippi(フィリッピーノ・リッピ)によって最終的に完成された。
というような、かなり、ルネッサンス・オールスター・キャストの壁画だったということを知る。

ちなみに、この「楽園追放」、17世紀のトスカーナ大公コジモ3世・デ・メディチの指示によって、アダムとイヴの「局部」を葉で覆うように上描きされてしまっていたが、1980年台の修復時に取り除かれて、元のままの状態に戻されている。


Masaccio-TheExpulsionOfAdamAndEveFromEden-Restoration.jpg
"Masaccio-TheExpulsionOfAdamAndEveFromEden-Restoration" by Masaccio - Transferred from en.wikipedia
Original source: [1]. Licensed under Public domain via Wikimedia Commons.


遠い昔、美術の教科書で見たのは葉っぱ付きヴァージョンだったように覚えている・・・私の歳はいくつだ、全く。
それにしても、修復前・後の鮮やかさの違いには驚かされる。

Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
これは、左壁面上部マサッチョによる「The Tribute Money貢の銭)」のシーン。
「税金未払いだろう?」と、徴税人(スカート男)に迫られたジーザス先生一行。
奇跡を起こす気充満の先生、「魚を捕ってその口の中を見てみなさい。」
元漁師ピーター(聖ペトロ)の本業なので、難なく捕まえたら(左のシーン)、
魚の口から銀貨が出てきた。
で、それで支払いを済ませて、事なきを得た(右のシーン)という話。
パースペクティヴ得意のマサッチョがもしかして、
Halo(光輪)を、頭に載せた「皿」状に、
パースペクティヴつけて描いた最初の画家?などと思ったりして・・・(笑)。

この絵に関して、かなり詳しい評論ヴィデオ(米語)を見つけたので、
ここにエンベッドしておくことに。



Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
その下の、The Raising of theophilus's son
(テオフィロスの息子の蘇生:中央~左:マサッチョ、フィリッピーノ・リッピ加筆)
ブランカッチ一族の肖像が多く描かれていたために、
後年敵対勢力によって破損されたものを、
フィリッピーノ・リッピが修復した、とも考えられている。
St. Peter Enthroned
(聖ペテロの即位:右 :マサッチョ)

左端の柱部分:
St Paul visits St Peter in Prison
(獄中の聖ペトロを見舞う、聖パウロ :フィリッピーノ・リッピ)

Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
チャペル正面壁、左上のSt. Peter Preaching
(聖ペトロの説教: マソリーノ)
ほら、これはマソリーノの手なので、
光輪がまだ中世風に、平たい円形で描かれている。
そして、全体に表情が硬いというか、静かというか。

Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
チャペル正面壁、左下 St Peter Healing the Sick with his Shadow
(聖ペトロが影で病人を治す :マサッチョ)
町並みが、今でもそのまま。

Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
チャペル正面壁、右上 Baptism of the Neophytes
(新参入者の洗礼 :マサッチョ)
ちょっと寒そう・心配そう・・・な描写がとてもリアル。

Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
チャペル正面壁、右下 The Distribution of Alms and the Death of Ananias
(施し物の分配とアナニアスの死 :マサッチョ)
原始共産制的な初期キリスト教システムでは、
参入者は資産を供出するようで、
こっそり不動産裏地を隠し持とうとしていた
アナニアスと妻は聖ペトロに見ぬかれて、
息が絶えてしまった・・・という怪談。

Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
チャペル、右壁面上部 Healing of Cripple , Raising of Tabitha
(左:足萎えの治癒、右:タビサの蘇生 : マソリーノとマサッチョ)

右端の柱部分:The Temptation (誘惑: マソリーノ)

Cappella dei Brancacci - Brancacci Chapel
右壁面下部 The Crucifixion of St.Peter, 
St.Peter and Simon Magus before Nero
(左:聖ペトロの十字架処刑、
右:ネロ帝の前の聖ペトロとシモン・マグス: フィリッピーノ・リッピ)
ペトロンの名前のついた十字架・・・というのは、逆さ十字のことなのだった。
アーチの左下でこっちを向いているのは、
フィリッピーノ・リッピの自画像といわれている。
私の写真では、見えやしないので・・・、
Wikiから借りてきた。
Filippino Lippi 007.jpg
"Filippino Lippi 007" by Filippino Lippi - The Yorck Project: 10.000 Meisterwerke der Malerei. DVD-ROM, 2002. ISBN 3936122202. Distributed by DIRECTMEDIA Publishing GmbH.. Licensed under Public domain via Wikimedia Commons.

なかなかイケメンである(自画像だから、なんとも・・・笑)。

右端の柱部分:The Liberation of St.Peter
(聖ペトロの監獄からの救出: フィリッピーノ・リッピ)
ヘロデ・アグリッパ1世に投獄された時は、
ちゃんと天使が救出に来てくれたのだけれどね。


丁稚彫刻家時代のミケランジェロが、ここのマサッチョを模写して勉強した・・・という話は有名らしい。
ここで、ライバルの仲間、Pietro Torrigiano(ピエトロ・トリギアーノ)のデッサンが「イマイチ」的な余計なことを言って、(鼻骨が折れて)一生鼻が曲がるほどのパンチを食らわされたのも、このブランカッチ・チャペルでの出来事だそう。
それが原因で、ピエトロ・トリギアーノはフィレンチェから放逐され、やがてイギリスにやってきて、イギリスに最先端のイタリア・ルネッサンスを伝えることとなったのだ・・・とかいう話。 意外と世界は狭い。


Santa Maria del Carmine 
(サンタ・マリア・デル・カルミネ教会)

Piazza del Carmine 14

公開:平日(火曜閉館)10:00am-17:00pm、日曜・祭日13:00pm-17:00pm、
1月1日、1月7日、イースター、5月1日、7月16日、8月15日、12月25日閉館。

大人:6ユーロ、18-25歳・65歳位以上・大学生(要証明):4.5ユーロ、18歳以下:無料

ということなんだけれど・・・ウチの一行は、
教会側から入場料も払わずに入ってしまったんだけれど?
どこで入場料取っていたのかな?

地図:

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