Friday 8 November 2013

V&A ファニチャー・ギャラリー -2-

V&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム)から、家具部門のギャラリーのイメージの続編を。
木製の家具に装飾を加えるとしたら、最初に思いつくのが、彫刻をすること、そしてペイントをすること・・・、というので、この2つは最も古い技法と考えてもいいかもしれない。


Box, about 1500-50, Northern France
16世紀前半、フランス製、オーク材の箱。
そして、最も古い家具の種類は、こんな様な「箱」、「チェスト」とも呼ばれる。
厳重に鍵がかかるので、金庫でもある。
それ以外には、ベッド(最も高価な家財道具)と椅子ぐらいしか、
中世以前には、家具の種類がなかった。
テーブルは、脚と天板が別々になった、仮設式のものが多かったという。
(この箱自体は、もう少し時代が下って、ルネッサンス期に差し掛かっているけれども)
英文解説とディティール写真はこのページ

Chair (sgabello), Italy, back about 1560-90, most other parts 1820-40 restored
16世紀後半、イタリア、ヴェニス製、ウォールナッツ材の椅子。
これはルネッサンス期の椅子でも、
ヴェニス>イタリア>ヨーロッパ全域に広まっていったスタイルで、
Sgabello(Sgabelli)スカベロ(かな?)と呼ばれるもの。
簡易椅子として、人数に合わせて移動させて使われた。
このチェアーは、背板と側版の片方だけが、16世紀のオリジナルで、
そのほかは19世紀に修復されたものなのだそう。
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Panel, possibly from a cupboard, about 1540-1600, probably northern France
16世紀後半、フランス製、オーク材のカバード(戸棚)の扉。
これも、ルネッサンス期のもの。
本来は、上の写真の箱のように、ダークにワックスがけされていたはず。
20世紀後半に、ワックスが取り除かれて、現在は素のオーク材色になっている。
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Frame for a painting, 1680-1700, FranceFrame - detail
17世紀後半、フランス製、金箔張りオーク材の絵画額。
金箔はほとんど剥がれてしまっていて、
全体に、下地の赤褐色顔料(bole)の色になっている。
立体的なガーランド(花輪)と額自体が、同じ材から彫られているのではなくて、
(中国製なら、やり/ やれそうだけど・・・。)
円周を4分割したものを、つなぎ合わせた額のベースに、
一房ずつ彫りだされた植物モチーフを、
順番に糊付けしていって構築されているのだそう。
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Mirror, about 1762-5, based on a design by Thomas Chippendale (1718-79), EnglandMirror - detail
1765年、ロンドン製、ミラー。
ミラーというか、Sconce(スコーンス)と呼ばれる、
壁掛けの反射鏡ミラーの前に取り付けられた燭台・・・の大型のもののよう。
Chippendale(チッピンデール)のデザインカタログに、よく似たデザインがあるため、
チッピンデール工房か、あるいは同時代の高度なコピー品と考えられている。
繊細にくねくねしたロココ様式に、中国趣味の鳳凰(?)がくっついているところが、
いかにも、チッピンデール。
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Corinthian capital, about 1780, England
1780年、イギリス製、コーニス型柱頭建築資材。
これは、家具・・・というよりか建築装飾部材で、
1780年に建造されたテラスハウスの一つの、
1階のメインの応接室のalcove(アルコーヴ=壁を凹ませて作った、主に装飾用の空間)
を、飾っていたものだそう。
パイン材で作られていて、もともとは、壁にあわせてペイントして使われていた。
ネオ・クラシカル様式の建築装飾の典型。
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Frame, about 1860, Tuscany,ItalyFrame-detail
1860年、トスカナ、イタリア製額縁。
ミュージアムのサーチに出てこなかったので、詳細がわからないのだけれど、
19世紀のルネッサンス・リヴァイヴァル様式のもの・・・、
なんだけれど、一番上のイーグルはネオ・クラシカルっぽいモチーフだったりして。
19世紀は、なんでも混合リヴァイヴァルの時代だったので、そういうのもアリ、かと。

Portfolio stand, 1873 Italy, Luigi Frullini
1873年、フローレンス、イタリア製、大判書・書見台。
これも、ルネッサンス・リヴァイヴァル様式のもの。
レリーフ入りのパネルが、手前に開いて降りて、テーブル状になる仕組み。
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Portfolio stand - detail
そのディーティール。材はウォールナット。

「彫り物」関連はこれぐらいで、ペイントされた家具の中から目にとまったものを。

Cabinet, about 1600, possibly Veniece - Italy
17世紀初頭、ヴェニス、イタリア製のキャビネット。
軟木材の上にレザー張り、その上に彩色されている。
両サイドの小扉に、カーディナル帽付の紋章が描かれているので、
当初のオーナーは枢機卿の一人であったと推測されている。
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Cabinet  -detail
そのディティール・・・なんだけれど、カーディナル帽の扉を撮りそこなった・・・。
左は竪琴を弾くダビデ王かな?宗教ネタということで。

Cupboard, dated 1776, upper AustriaCupboard - detail
1776年、オーストリア製、パイン材カバード(戸棚)。
ペイント家具は、圧倒的にコンチネンタル(大陸ヨーロッパ)に多い。
なぜだかイギリスにはない。
イギリスはオーク材を使ってワックス仕上げというのが普通。
コンチネントではパイン材を使って、ペイント仕上げ。
材の違いに拠るのかな・・・とも思うけれど、正確なところは知らない。
この花は、中央ヨーロッパ>東ヨーロッパ>トルコ>ペルシャにまで
ルーツが遡るモチーフ。
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Cupboard - detail
そのディティール。田舎風の素朴なタッチ。

V&Aのファニチャー・ギャラリーから、目に付いたものをいくつかピックアップしてみたけれど、家具・インテリア好き、クラフト技法に興味のある人間には、なかなか興味深いギャラリーなのでした。






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