Tuesday, 5 November 2013

V&A ファニチャー・ギャラリー -1-

今回と次回は、V&A(ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム)から、家具部門のギャラリーのイメージ。
ちょうど昨年の11月に新装オープンとなった。
以前は、主に20世紀以降のデザインのものが、照明の暗いぱっとしない展示室に押し込められていた・・・ように覚えている。
新しくギャラリー(展示室)は、時代・様式で家具を見せるのではなくて、技法・素材をテーマにして分別展示されている、というのが新鮮なポイント。
まぁ、私のこととて・・・それぞれのテーマに沿って、ちゃんと見ているわけではなくて、自分の好きな部分にだけやたら注目してみている・・・という、相変わらずの偏りレポートだけれど。


V&A Furniture room
正面入り口にあたる、Room135から見たところ。
ちょうど建物の6Fの、西側の端にある。<V&Aマップはこのページ
この6Fの一角は他の展示室からは離れているので、
ぶらぶら見ているとたどり着けない。
「6FのXX室」というように、探し出すのに、
ちょっと目的意識の必要とされるエリアなのだった。

V&A Furniture room
反対のRoom133から見たところ。
最上階なので、屋根からの自然光が充分に入ってきて、
見やすい展示構造になっている。
各展示品の詳しい解説は、タッチ・スクリーン式のディスプレイパネルで
表示されるようになっているため、解説ボードがごちゃごちゃしていなくて、すっきり。

Cabinet, about 1650, using panels of 1600-50, cabinet-Northern Europe, panels-Florence-Italy
一番、目が釘付け・・・だったのが、このキャビネット。
Inlay(インレイ=切り嵌め象嵌)のセクションにあった、
イタリア17世紀製の大理石・半貴石象嵌パネルを使ったもの。
英文解説とディティール写真はこのページ

Cabinet panels
扉2枚のイメージを合成してみた。
木製ヴェニアを染色して、象嵌細工したものも、
イタリア製でよく見かけるけれど、それだと年月を経て褪色してしまっている。
この場合、石自体のカラーなので、見事にヴィヴィッドなまま。

Table top, about 1580, Rome-Italy
同じくイタリア16世紀後半製の、
マーブル(大理石)marquetry(マーケトリー=はめ木象嵌)のテーブルトップ。
英文解説とディティール写真はこのページ
(なんだか私の写真、V&Aのに比べると青いね・・・笑)。

Table top- detail
そのディティール。
V&Aの解説によると、ローマでは、古代ローマ時代由来の大理石石材を、
その後の時代でも発掘再利用されていた・・・とか。
イタリア大理石の歴史は奥深い・・・。

Virginal, 1577 with later additions probably by Annibale Rossi(active 1542-77), Milan- Italy
インレイ関連で、この16世紀イタリア製Virginal(ヴァージナル)の装飾もお見事。
家具というよりかは楽器で、ヴァージナルというのは、
箱型の小型ハープシコードのこと。
フェルメールの絵画などでもよく登場するタイプの楽器の、超豪華版。
英文解説とディティール写真はこのページ

Virginal - detail
ディティール。これはもうジュエリー系。
ダークなエボニー材に象牙のインレイ、そこにアメジストやジャスパーなどの
半貴石のカボションがはめ込まれている。

Virginal - detail.jpg
鍵盤にも大理石のマーケトリー象嵌で、

Virginal - detail.jpg
ハーディーガーディーなどの楽器を演奏する、
象牙製ミニュチュア天使が、付いている。

Detached front of a cabinet, about 1605-30, probably India(Gujarat) or Pakistan(Sindh)
17世紀インド製、キャビネットの正面扉。
チーク材にホーン材のインレイ象嵌。
英文解説とディティール写真はこのページ
ウィリアム・モリスが所有していたものなのだそう。

Detached front of a cabinet - detail
そのディティール。
どことなく、モリスのパターンとも相通じるような・・・(笑)。

Desk and bookcase, probably about 1780-1820, prpbably Mexico
18世紀後半~19世紀前半、メキシコか中南米諸国で製造された、
ライティング・ビューロー付ブックケース。
この場合、表面をびっしり覆っているのは、真珠母。
中国淡水性の貝が輸出されて、使われたと考えられている。
英文解説とディティール写真はこのページ

Bureay-bookcase - detail
そのディティール。
真珠母片が一つも損傷なしの状態で残っているのは、お見事。

Ornamental dish (tazza), about 1880, Maison Giroux, Paris-France
パリ、フランス、Maison Giroux製作、1880年、飾り皿。
アイボリーとさまざまな種の木材のマーケトリー象嵌。
ジャパネスク・スタイルで、日本画や日本工芸の影響の大きいデザイン。
英文解説とディティール写真はこのページ

Ornamental dish (tazza)- detail
木材の部分に染色がされているけれど、かなり褪色してしまっている様子。
製作された当初は、カラフルな飾り皿だったと思われる。

Cabinet, about 1700, probably by Andre-Charles Boulle(1642-1732), Paris-France
パリ、フランス、Adam Weisweiler製作、1780-90年、キャビネット。
マーケトリー象嵌装飾の素材は、木のように見えるのがべっ甲で、
そこに真鍮や、ピューターの薄板をはめ込んで作られている。
英文解説とディティール写真はこのページ

marquetry
最後にこれは、Parquetry(パーケトリー=寄木細工)のプロセスの解説ディスプレイ。


見た目似たように見えるけれど、
Inlay(インレイ=象嵌)、Marquetry(マーケトリー=切り嵌め象嵌)、Parquetry(パーケトリー=寄木象嵌)という3つの別物の技法がある。
私もよく最初解らなかったのだけれど、どうやら・・・、

インレイ=全体のベースになる素材があって、それを彫り落としたところに、模様になる薄いヴェニア材をはめ込んだもの。

マーケトリー=薄いヴェニア材同士を重ねて模様に切り抜き、色・素材の違うコントラストになるように、それぞれの薄ヴェニアを組み合わせかえる。それをベースになる素材に貼り付けたもの。つまり、表面全体はヴェニア材同士で覆われている。

パーケトリー=最後の写真でよく解るように、細くカットされた素材を、幾何学パターンに組み合わせて貼り付ける。すると「金太郎飴」みたいな、パターンの通ったバーが出来上がる。これを、ヴェニア状にスライスしたものを、ベースになる素材に貼り付けたもの。これも、表面全体はヴェニア材同士で覆われている。

ということのよう。
一見しただけでは、なかなか判別がつかないものも多くて、いまだに混乱中。
日本語だと・・・全部「象嵌」なような気もするのだけど・・・、ちょっとこのへん、日本語の記憶も怪しい。

次回もまた、このV&A家具部門のギャラリーより、引き続き。

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