St Pancras Renaissance Hotel (セント・パンクラス・ルネッサンス・ホテル)
今回の標本箱は・・・先にお断り、全部Flickrからの借り物写真。私のフォトストックではありませんよ、念のため。
写真はすべてオープン直前の「内見ツアー」(こんなのあったとは知らなかったよー・・・涙)に参加したlondonstuff氏の撮影。
Special thanks to londonstuff @Flickr for sharing these fab images!!
借りてきてでもまとめてみたかったのが、今年の4月に大改装再オープンした、このロンドンのセント・パンクラス・ホテル。
もともとは、ミッドランド鉄道のターミナル駅付随のミッドランド・グランド・ホテルとして、George Gilbert Scott(ジョージ・ギルバート・スコット)卿の設計で、1873年にオープンした、ネオ・ゴシック建築の典型。
しかし、華麗であまりにもロマンティックな建築は、1936年にはすでに、時代の要求に合わないものとして閉館されてしまう。
20世紀に入って以来、ホテルの各部屋にバス・トイレが完備されるのが、アメリカに始まり世界大都市スタンダードになってきたのだが、この旧式の豪華な老婦人のようなホテル(ホテル・スタッフが、ヒップバスとお湯を部屋に運ぶシステム)を、モダンスタンダードに改修する資本が、鉄道会社には残っていなかった・・・、というのが、真相らしい。
というのは、この建物が今回のマリオット・ホテルチェーンに買収されて、大改装直前の数年前、最後のビルディング内見ツアーに参加したときに聞いた話。(このときに写真をやってなかったのので、廃墟状態の内装の写真がないのが残念・・・。)
30年代の閉館後は、鉄道関連のオフィスとして使われていたが、なんども買収・改装案が出ては、あまりの壮大なコストに話はすべてたち消えとなっていったとか・・・。
イギリスが経済不況に陥っていた70-80年代は、このエリアが最も荒廃していた時期で、その真ん中にダイノザウルスのようにそそり建つこのゴシック建築を、なぜだか私はこよなく愛していた。
栄光の過去のノスタルジックな響きを留める「ミッドランド・グランド・ホテル」という名前とともに。
それから時代は全く変わってしまって、ミレニアム(2000年)以降の経済バブルの続いたイギリスには、パリーロンドンを繋ぐユーロスターが導入される。当初Waterloo駅(ウォータールー駅・・・ちなみにうちのターミナル。パリまで便利だったんだ・・・)がロンドン側のターミナルだったのだが、スピードアップとトラブル防止のために、今までの在来線共有使用ルートから、ユーロスター専用ルートが敷かれて、ここ、セント・パンクラスに乗り入れとなった。
かくして・・・セント・パンクラスは、再び時代と経済の最先端に押し出された・・・ということは、旧ミッドランド・グランド・ホテルにも投資価値が出てきた、というのが今回の新装オープンにいたるいきさつ。
撮影:Ingy The Wingy @Flickr
これまた別の人からの借り物の外観写真。
V&Aや自然史博物館、王立裁判所と同様・・・私的ロンドン建築Top10入りしている。
(あ、ゴス好きなだけ・・・笑)
撮影:londonstuff @Flickr
客室に至る中央の大階段。
撮影:londonstuff @Flickr
階段前のランディングには壁画。
Spencer(スペンサー)の「(Fairy Queen)神仙女王」の詩にちなんで描かれた、Thomas Wallis Hayの手になるもの。
改装前ツアーに参加したとき、周りは壁材・床材むき出しになっている環境で、壁画と鉄の手すりが
いまだにいい状態で保たれていたのが印象的だったのを、覚えている。
撮影:londonstuff @Flickr
その、階段の鉄製手すり。
撮影:londonstuff @Flickr
天井はこんな風にペイントされていて・・・
中世~チューダー期の教会の天井によく使われたパターンから採られている。
撮影:londonstuff @Flickr
カーペットもオリジナル・デザインがリプロで製作された。
撮影:londonstuff @Flickr
これは、付随のバーの入り口。
撮影:londonstuff @Flickr
天井が圧巻・・・、こ・・・こんなだったんだ・・・。
撮影:londonstuff @Flickr
これはレストラン部の内装。
撮影:londonstuff @Flickr
旧館の廊下が少し暗くて陰気な感じだったのだが、それはそのまま。
この廊下にあるキャビネットは「物入れ」で、19世紀のものを踏襲している。
実際の収納スペースが足りないため、当時このようなキャビネットを設置する必要があったのだとか。
撮影:londonstuff @Flickr
これは、建物の間を繋ぐ鉄橋廊下。とても、ゴシック。
撮影:londonstuff @Flickr
Ladies' smoking room (女性用喫煙室)。
Smoking roomというのは、食後紳士諸君が煙草をふかしながら「男内の話題」に興じる・・・とういう伝統の部屋。
女性は「ティールーム」の方に移動して、「女内の話題」に興じるということになっている。
「女性用喫煙室」がホテルに設けられるのは、画期的な例だったそうだ。
撮影:londonstuff @Flickr
修復された、Ladies' smoking room (女性用喫煙室)のインテリア。
テラスに面した、明るい開放的な部屋だったのを覚えている。
撮影:londonstuff @Flickr
これが現代の「一般の」部屋で、あー、あまり広くない、あー、あまりたいしたことない(失礼)。
それでも一泊250ポンドぐらいするそうなので、私自身はけして泊まることはない・・・だろうな?
撮影:londonstuff @Flickr
ところが・・・設計者ジョージ・ギルバート・スコット卿にちなんで名づけられた、最高級の部屋があって・・・、
撮影:londonstuff @Flickr
カーテン・カーペット・家具に至るまで、すべて当時のギルバート・スコットのデザイン通りに復刻されている。
(この撮影時は、まだ工事が続いている様子) これは、一泊うん千ポンドの部屋であることは間違いない・・・。
私自身はけして泊まれないと・・・これだけは断言できる(笑)。
撮影:londonstuff @Flickr
ホテルの一室から眺める、セント・パンクラス、ユーロスター・ターミナル。
そういえば、来年はオリンピックやるんだなー(超無関心・・・笑)。
撮影:londonstuff @Flickr
入り口を入ったところのロビー。
「お泊り」は私には無理そうなので、ここでぜひお茶でもしたいもの。その折には、もちろんカメラ持参で^^。
個人的には、あまり利用するチャンス(予算?)のなさそうなホテルだが、建築が蘇って生き生きと輝いてくるのを見るのは、本当に嬉しくなってしまう。
潤沢なご予算と興味をお持ちの方は<このページ>からブッキングできますよ。
Labels: アート/デザイン
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