ヘンリー8世のハネムーン - チューダー・コスチューム・イベント -1-
土曜日のチューダー・コスチューム・イベントの写真中、約半分のポストプロセスが出来てきたので展覧しよう。
チューダー朝というのは、イギリスで言うところのルネッサンス時代。
中世のプランタジネット朝最後の王リチャード2世は、対仏百年戦争の後、ランカスター家のヘンリー4世によって廃位させられる。そのランカスター家も、ヨーク家との王位争奪抗争からバラ戦争を招き、国は荒廃する。
やがて、不毛な抗争に両家ともに消耗し、ランカスター家の血を引くヘンリー7世が即位、ヨーク家のエリザベスとの婚姻で両家が合体し、1485年チューダー朝が始まる。というのが、チューダー朝にいたるまでの、とても大雑把な歴史。
歴史の話より、まずはヴィジュアル。
Queen - Jane Seymour (女王 ジェーン・シーモア)
この写真は、自分でもよく撮れたと思う・・・。
かなり近距離で撮れて、ちょうどカメラに向いてにっこり微笑んでくれた。
ポストプロセスなしでもO.K.の写真だったが、やはり絵画風に仕上げたくてテクスチャーをかける。
上のイメージでジェーン・シーモアのかぶっている「被り物」、まるで「角隠し黒ヴァージョン」に見えるが、初期チューダー朝コスチュームの典型Gable(ゲイブル)。ゲイブルの本来の意味は建築でいうところの「切り妻」。
確かに切り妻屋根の形をしている・・・。この黒い部分は、後ろに垂れ下がっている2枚の布飾りで、普段は後ろに垂れたままにしていることが多い。彼女の場合、有名なホルバインの肖像画に準じて巻き上げているのだろう。
Jane Seymour by Hans Holbein 撮影:lnor19@Flickr
これがイメージ・ソース。最も有名なジェーン・シーモアの肖像画。
ヘンリー8世とジェーン・シーモア
後ろにいる観客の首を(そして足を)Photoshopでちょん切るのはたいそう手間がかかる作業(笑)
イベントの設定では、彼女は妊娠中ということになっている。史実でもヘンリー8世の唯一の嫡男・エドワード王子(エドワード6世)はジェーン・シーモアが生んでいる。しかし、この結果産褥熱であっけなくジェーン・シーモアは亡くなってしまう。嫡男王子を産んだということもあるが、ヘンリー8世は実は彼女だけを愛していたのではないか?とも言われている。
そのエドワード6世も父王の死後、王位を9歳で継ぐが、6年後夭逝。そして、ちょっとした内紛の後、エリサベス1世の即位となる。 あぁ、また余計な歴史話・・・。
歴史話より、雑学。この王様のコスチュームを見て「!!??」と思われた方もあろうかと・・・股間の話。
チューダー・コスチュームを見慣れていないと、紳士方の股間の「コッドピース」に目がいって仕方がない・・・ことと思う。冗談でも卑猥でもなく真面目な話、歴史的にこんなものが流行っていたのだからどうしようもない・・・。誰が流行らせたのかは不明(私は個人的に、マッチョイズムの塊、ヘンリー8世が犯人だと見ている)、そして、なぜ「コッドピース」と呼ばれるかは知らない(また調べてみるが・・・)。できれば気にかけずスルーしていただきたい(笑)。
これはハンプトンコート・パレスの「裏口」。
ハンプトン・コート・パレスは奇妙な造りで、正面が赤レンガの16世紀チューダー様式。そして裏の、テムズ川に連なる庭園に面したウィングは「新王宮」と呼ばれる、17世紀のバロック様式。
これは、ウィリアム3世とメアリー女王が「古臭い」チューダー様式の宮殿を嫌って、「トレンディ」に改築したため起きたもの。「裏口」と私は呼んでいるが、これはその「新王宮」側から庭園に出て行く出入口。白いスタッコ(漆喰)の柱に天井は、ヘンリー8世に時代にはありえない・・・。
ともあれ、これから一同は庭園をぬけて、テムズ川に向かう。テムズ川からさかのぼってくるフランス大使と神聖ローマ帝国(ドイツ)大使を、川辺でお出迎え。そのシーンはまだポストプロセスしていないので、第二部で・・・。
「今年の」というのには理由がある。ハンプトンコート・パレスではこのようなコスチューム・イベントが年に1-2回催される。契約あるいは専属の俳優・女優さんが演じるのだが、何度も訪れていると、だんだん顔を覚えてくる。去年のヘンリー君は、今年は護衛兵の役で後ほど出てくる。
王の側近、某かの役なのだが・・・、それを覚えているほど歴史には詳しくない・・。
チューダー政界人ということにしておく。
彼はどうやらパレス専属の俳優、あるいは兼プロデューサーかもしれない。
いつも司会・進行役を兼ねていて、多才の上に、とてもいい味を出している。
同様、チューダー政界人達。
後ろの人物は、王のカトリック離脱―英国国教会設置に最後まで抵抗して獄死した知識人、
トマス・モアのような気がするが・・・史実と時代的には合っていない。
まあ、エンターティメントなので、多少の時代誤差は無視ということ。
ノン・ポリ(政治は抜き)の道化師。
彼は唯一の道化師役者で毎年大活躍。
護衛兵。
そう、彼が去年のヘンリー君。王様ぶりがよく似合ってたのだが・・・。
護衛兵でも、やくざの親分的なるいかつさを発揮(この人、尋常でなくでかい声が出せる俳優)。
若き護衛兵。こちらはなかなかのイケメン君。
最後は愛らしいチューダー・ガール。
どうしても、コスチュームの「オタク」ねたを書かずにはおれない・・・。
この彼女の被っている「被り物」は、ゲイブルではなくフレンチ・スタイルと呼ばれるもの。
形が柔らかで、重苦しい感じがない。これは、ヘンリー8世の2度目の妃、アン・ブーリンが持ち込んだもの、と言われている。(彼女は新興富裕階級の純粋なイギリス人だが、フランスで教育を受け、ヘンリー8世の最初の妃キャサリン・オブ・アラゴンの侍女を務める以前はフランス宮廷に仕えていた。)
この後、エリザベス1世の時代にはこういった「被り物」はどんどん小さくなり、ヘア・バンドや髪飾り状のものになっていく。
明日は、またジュエリー。新しいラインの作品を展覧しよう。
イベントの続きはそのまた後に・・・。
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